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山田隆道作家

1976年、大阪生まれ。早大卒。「虎がにじんだ夕暮れ」などの小説を執筆する他、プロ野球ファンが高じて「粘着!プロ野球むしかえしニュース」などの野球関連本も多数上梓。各種スポーツ番組のコメンテーターとしても活躍中。

白髪イチローの衰えた姿に身震いするような色気を感じる

公開日: 更新日:

 恐らくイチローは、近いうちに引退するのだろう。一部では東京ドームで行われるマリナーズの開幕2連戦が最後の花道になるという説も噂されているが、確かにここで引退しないとどこでするのだ、と思う。偉大なるレジェンドのために用意された晴れ舞台だ。

 だからこそ、今の衰えたイチローを見ることには余計に意味がある。イチローが実際に引退したら、多くのメディアが彼の栄光の足跡を何度もVTRで放映し、それは世代を超えて多くの人々に届くだろう。今は映像がいくらでも残る、また誰でも簡単に視聴できる時代だから、これからの新しい世代にもイチローの全盛期の輝きはいくらでも伝えていくことができる。昔のように口頭で語り継ぐ必要はないのだ。

 しかし、その一方で、イチローの晩年のプレーについては、彼が引退するとどんどん蓋をされていくだろう。とりわけメディアは引退したレジェンドを未来にわたって過剰に美化するだろうから、そんなレジェンドの衰えという、これまた至高の味わいを持つ渋い姿を見せてはくれないはずだ。

 そう考えると、これからの時代は晩年の寂しい姿こそ、同時代を生きた者が口頭で語り継いでいくしか後世には残らないのかもしれない。どんな天才であってもアスリートである以上、必ず終わりが来る、そんな当たり前の事実をシビアに伝えることも必要だろう。

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