「ホット・システム」と「クール・システム」を知れば誘惑に勝てる
目の前のおやつを「今すぐ食べたい!」と思ったこと。あるいは、「後で楽しむために、今は我慢しよう」と思ったこと。みなさんにも、似たような経験があると思います。
私たちがこうした選択をするとき、心の中では2つの異なる働きがせめぎ合っています。それが「ホット・システム」と「クール・システム」と呼ばれる心理的な仕組みです。
この枠組みは、心理学者ジャネット・メトカーフとウォルター・ミッシェルによって提唱されたのですが、彼らは1999年に発表した論文の中で「報酬の遅延選択」、すなわち目先の小さなご褒美よりも、将来の大きな報酬をどう選ぶか--という人間の意思決定プロセスを調べています。
まず、ホット・システムとは、私たちの感情や衝動に強く関係する心の領域を指し、誘惑的なものを前にしたとき、「いま欲しい!」という感覚を引き起こすアクションです。感情の熱量が高く、反応が早いため、目の前の報酬に飛びつきやすくなります。
一方、クール・システムは、思考力や先を見通す力、冷静な判断を担う仕組みを指します。