著者のコラム一覧
元川悦子サッカージャーナリスト

1967年7月14日生まれ。長野県松本市出身。業界紙、夕刊紙を経て94年にフリーランス。著作に「U―22」「黄金世代―99年ワールドユース準優勝と日本サッカーの10年 (SJ sports)」「「いじらない」育て方~親とコーチが語る遠藤保仁」「僕らがサッカーボーイズだった頃2 プロサッカー選手のジュニア時代」など。

「中村憲剛の後継者」川崎・MF田中碧が描く理想のシナリオ

公開日: 更新日:

田中 碧(MF/川崎・22歳)

久保建英(ヘタフェ)ら2列目が、前向きの状態を作れるようにボールを渡すのが自分の役割。それができれば、日本の攻撃はより活性化する」 
 
 0ー1で惜敗した26日のU-24アルゼンチン戦(東京)。出場停止で試合を外から見ていた20年Jリーグのベストイレブンに選ばれた田中碧は、29日の2戦目(北九州)のリベンジのポイントをこう語った。

■A代表定着も

 川崎でFW小林悠やMF三笘薫のゴールをお膳立てしているようなプレーを代表でも示すことができれば、A代表定着も見えてくる。彼はそれだけの逸材なのである。

 日本がフランスW杯に初出場した1998年、神奈川県・川崎市で生まれた田中碧は、小学3年からフロンターレに在籍する生え抜きだ。2学年上の三好康児(アントワープMF)、板倉滉(フローニンゲンDF)、1学年上の三笘の背中を追いかけてきた。

 そんなハイレベルの環境下でお手本としてきたのが、昨季限りで引退した元日本代表MF中村憲剛(川崎FRO)だ。

「小さい頃からの憧れで、プロ入り後も凄さを感じる日々でした。憲剛さんにボールを渡しておけばゲームを作れるし、守備の時もついていけばボールを取れる。僕は憲剛さんにはなれないけど、自分の長所と憲剛さんの特徴をプラスして超えていきたい」

 大先輩が、10年南アフリカW杯代表で感じ取った領域を明確に見据えている。

 潜在能力の高さは、早くから認められていた。

 最初に日の丸を背負ったのはU-16代表。14年AFC・U-16選手権(タイ)は韓国に敗れて世界を逃したが、冨安健洋(ボローニャDF)や堂安律(ビーレフェルトMF)、渡辺皓太(横浜M・MF)とともに戦い、世界基準を強く意識したという。

 U-20世代では代表に縁遠かったものの、プロ3年目の19年に川崎で定位置を確保したことで評価が急上昇。東京五輪候補入りし、同年10月のブラジル戦では2点を叩き出す強烈インパクトを残した。

 その余勢を駆って同年末には、A代表の一員として東アジアE-1選手権(韓国・釜山)に参戦し、「近未来の日本代表ボランチ」と目されるようになった。

 その期待通り、昨季は川崎のJ1と天皇杯の二冠に貢献。「憲剛の後継者」たるべき自覚を大いに深め、そして日本代表の舞台に戻ってきた。

「(25日の日韓戦=東京)を見て、日本を引っ張っているのは海外トップレベルで戦ってる選手なんだなと痛感しました。(1月にポルトガル移籍したMF)守田(英正=サンタクララ)君も海外経験が自信になっている。見習うことは多かった」と前々から胸に秘めていた海外移籍願望が、一層強まったことを明かした。

「今夏の欧州移籍予備軍」と目されている彼にしてみれば東京五輪を経てA代表に定着し、22年カタールW杯の最終予選参戦した上で本大会に主力として出場するーーというのが理想のシナリオだ。

■アルゼンチン戦で存在感を

 その夢を実現するためにも、まずはアルゼンチン戦で存在感を示すことが先決だ。

「自分も昨年、一昨年からできることが増えてるし、(プレーなどの)質も上がっている自信がある。だからこそアルゼンチンのような強豪と戦うのは楽しみ。相手を圧倒するプレーをしないといけない」と全力でぶつかっていく覚悟だ。

 目鼻立ちのハッキリしたイケメン。ツンデレの性格も、周囲を惹き付けてやまない。その愛されるキャラクターを生かして一気にスターダムに駆け上がり、中村憲剛や大島僚太といったW杯代表出場の先輩を超えていきたい。 

 キャリアの成否の分かれ目にいる今を大事にしてほしい。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • サッカーのアクセスランキング

  1. 1

    JリーグMVP武藤嘉紀が浦和へ電撃移籍か…神戸退団を後押しする“2つの不満”と大きな野望

  2. 2

    FW大迫勇也を代表招集しないのか? 神戸J連覇に貢献も森保監督との間に漂う“微妙な空気”

  3. 3

    W杯最終予選で「一強」状態 森保ジャパン1月アジア杯ベスト8敗退からナニが変わったのか?

  4. 4

    W杯本番で「背番号10」を着ける森保J戦士は誰?久保建英、堂安律、南野拓実らで競争激化必至

  5. 5

    W杯8強へ森保J「5人の重要人物」 頭痛の種は主将・遠藤航の後継者…所属先でベンチ外危機

  1. 6

    待望の独1部初ゴール!元軍人の父を持つ帰国子女の日本人DFが代表CBに殴り込み…森保監督も用意周到に“手当済み”

  2. 7

    なでしこ史上初「外国人監督誕生」に現実味…池田太監督の退任の裏にJFA会長の強い意向

  3. 8

    Rソシエダ久保建英が英リバプール入りなら遠藤航は“玉突き放出”へ…11月はゴラッソ連発で存在感マシマシ

  4. 9

    45歳で引退…元日本代表MF稲本潤一「指導者の資質」 識者は“独特の武器”に太鼓判

  5. 10

    もう「草サッカーのレベル」なのに…キング・カズ「還暦プロサッカー選手」に現実味

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人がもしFA3連敗ならクビが飛ぶのは誰? 赤っ恥かかされた山口オーナーと阿部監督の怒りの矛先

  2. 2

    大山悠輔が“巨人を蹴った”本当の理由…東京で新居探し説、阪神に抱くトラウマ、条件格差があっても残留のまさか

  3. 3

    悠仁さまの筑波大付属高での成績は? 進学塾に寄せられた情報を総合すると…

  4. 4

    大山悠輔に続き石川柊太にも逃げられ…巨人がFA市場で嫌われる「まさかの理由」をFA当事者が明かす

  5. 5

    織田裕二がフジテレビと決別の衝撃…「踊る大捜査線」続編に出演せず、柳葉敏郎が単独主演

  1. 6

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇

  2. 7

    ヤクルト村上宗隆と巨人岡本和真 メジャーはどちらを高く評価する? 識者、米スカウトが占う「リアルな数字」

  3. 8

    どうなる?「トリガー条項」…ガソリン補助金で6兆円も投じながら5000億円の税収減に難色の意味不明

  4. 9

    「天皇になられる方。誰かが注意しないと…」の声も出る悠仁さまの近況

  5. 10

    タイでマッサージ施術後の死亡者が相次ぐ…日本の整体やカイロプラクティック、リラクゼーションは大丈夫か?