ソフト代表主将“女イチロー”山田恵里に直撃インタビュー

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 日本が金メダルを獲得した2008年の北京五輪を最後に正式種目から除外されたソフトボール東京五輪では野球とともに3大会ぶりに正式種目に復帰した。日本は北京以降の世界選手権5大会でいずれもライバルの米国とともに決勝進出。日本2勝、米国3勝と両国で優勝を分け合っている。東京五輪で代表チームの主将を務めるのが山田恵里だ。エース右腕の上野由岐子(38)とともに3度目の出場となる。ソフトボール界では安打製造機として知られ、「女イチロー」の異名を持つ。北京五輪に続き、2度目の主将に指名された山田恵里(37・デンソー)を直撃した。
(聞き手=近藤浩章/日刊ゲンダイ

 ◇  ◇  ◇

 ――東京五輪に特別な思いはありますか?

「3大会13年ぶりにソフトボールが実施されるのは、東京だからこそです。もしかしたら引退していたかもしれませんが、続けていたからこそ、もらえたチャンス。五輪でプレーできることに感謝の気持ちを伝えたいです」

 ――今大会を最後に再び、正式種目から除外されます。

「ソフトボールを世界的に盛り上げることで再び、復活することもあるでしょう。自分は3大会目の出場になりますけど、ロンドン、リオ大会でも実施されていれば、出場できた選手もいたはずです。五輪の舞台は本当に特別なので、多くの人に経験して欲しい。五輪では今後のソフトボール競技の発展を考えながら、プレーしたいです」

 ――五輪の舞台がなくなっても続けてこられたのはなぜですか?

「応援してくれる人、支えてくれる人のためというのもありましたが、五輪競技から外れても、小学生から大学生までソフトボールを続けている選手がたくさんいました。私は2回も五輪出場できましたけど、若い選手たちの目標がなくなってしまうのは良くないこと。若い選手のためにも、ソフトボールを五輪の正式種目に復活させたかった。五輪を目指すきっかけになったのも、銀メダルを獲得したシドニー五輪を見たから。自分がプレーすることで少しでもソフトボールが盛り上がればという思いでプレーしてきました」

 ――過去の大会と比べて心境の変化はありますか?

「アテネの時は、まだ20歳で自分のことしか考えていませんでした。北京でキャプテンを任されて、周りを見ないといけないと気付かされました。誰かのために、と思ってはいたのですが、五輪競技から除外されて目標を失ってしまい、自分のことしか考えられなくなっていた。周りの人たちから考え方を変えてもらいました」

 ――今回の代表チームをどう見ていますか?

「全体的に年齢層は高いですけど、若手もいます。投打のバランスがいいチームだと思います。投手は右2人(上野、藤田倭)、左1人(後藤希友)と3人いますし、打者も左右揃っており、小技ができたり、走れる選手もいます。バリエーションは豊富です」

「メダルの色は言うまでもありません」

 ――五輪経験者が3人(山田、上野、峰幸代)いるのは強みになりますか?

「初めて五輪に出場する選手も、それぞれがしっかりしています。主将として特に何かしなければいけないことはないので、助かっています。好きなことを仕事にできているのは幸せなことなので、みんながそれを理解し、ソフトボールができることに感謝しながらやっていると思う。だからこそ、責任感があるし、結果を出したい気持ちもあると思っています」

■メキシコ、イタリアも強い

 ――金メダル取りの最大のライバルは米国になりそうですが。

「米国もそうですけど、今はどのチームも強くなっているので、油断はできません。今までは米国、カナダ、豪州の3チームが強豪でしたけど、メキシコやイタリアも強化してきているので、大変ですよ。五輪復帰が決まってから、どのチームも意気込みが変わったように見えました。それまで、代表活動に本気で取り組んでいる海外の選手は少なかったのですが、各国とも本気で取り組むようになりました。世界選手権で対戦した相手チームを見ると、以前は代表としての誇り、プライドは薄かったように思います」

 ――エースの上野はどんな存在ですか?

「自分が語れることではないですけど……。結果を出すまでの準備、取り組み方はすごいの一言です。トレーニング、走り込み、考え方が全て一流なので、勉強になります。常に準備を怠らないので、取り組む姿勢を参考にしています」

 ――去年のコロナ禍による自粛期間はプラスになりますか?

「個人的に19年は日本リーグで結果を残せていなかったので不安がありました。当初の予定通り五輪を迎えていたら、結果は出せなかったかも知れません。去年に比べたら今年は状態がいい。コロナの期間で自分自身を見直すこともできましたし、準備する期間が1年増えたので、プラスになったと捉えています」

 ――五輪本番では攻守にわたる活躍を期待されています。

「自分が結果を出すことがチームのためになるので、自分のプレーに集中します。選手個々のプレーが一つになってこそ、チームの勝利につながると思います。いろんな人の支え、応援があって今の自分があります。結果で恩返ししたい。メダルの色は言うまでもありません(笑い)」

▽山田恵里(やまだ・えり)1984年3月8日、神奈川県藤沢市生まれ。165センチ、60キロ。左投げ左打ち。強豪の厚木商高から日本リーグの日立製作所に入社。2003年に代表に初選出され、アテネ五輪に出場。北京五輪では主将を務め、金メダルに導いた。今年1月にデンソーに移籍。通算422安打、202打点、45本塁打は、いずれも日本リーグ1位。類いまれな打撃センスと堅守で「女イチロー」の異名を持つ。

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