16年ぶり阪神Vなら経済効果は620億円【リポート先行入手】

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 コロナ禍といえども、阪神優勝の経済効果は絶大のようだ。開幕からの快進撃でセ・リーグ首位を快走する阪神。28日の西武戦はルーキー佐藤輝が3本塁打の大活躍で逆転勝ち。2005年以来、16年ぶりのリーグ優勝を期待する声は日増しに大きくなっている。そこで日刊ゲンダイは、数多くの経済効果を算出している関大名誉教授の宮本勝浩氏に、阪神が今季優勝した場合の経済効果の算出を依頼。リポートを先行入手した。

  ◇  ◇  ◇

■日刊ゲンダイ先行発表

「この時期に発表するのはかなりの冒険です。本来は優勝決定の1カ月ほど前に推計を行うことがより正確です。2005年から16年間、リーグ制覇から遠ざかっており、本当に優勝できるか半信半疑なファンも多いと思いますからね」

 こう言って苦笑いを浮かべる宮本氏は根っからの阪神ファン。03年のリーグ優勝時を皮切りに阪神が優勝争いに絡んだ年に、リーグ制覇、日本一による関西地区における経済効果を発表してきた。今回は5月末という早い段階で算出してもらったため、リポートにはこんな前置きがあることをご理解いただきたい。

<今後のコロナの影響が全く予測できないこと、毎年のセ・パ交流戦の阪神の成績が芳しくないこと、したがって、6月以降から夏場にかけての阪神の成績が全く読めないこと、試合数がどうなるかわからないこと、五輪によって状況がどう変わるかわからないことなど不確定要素が多すぎる。したがって、本報告書はかなり思い切った前提を置いていること、現段階での推定値にすぎないことをお断りしたい>

 さて、今回の算出においての概要を宮本氏に聞くと……。

「関西地域における経済効果は約620億7050万円。03年の1481億円や05年の643億円よりも少ない金額となりました。これは今年、無観客試合や観客数の制限があるためです。ただし、14年に2位から日本シリーズに進出したときの429億円を上回る金額になります。もし、今年の全試合が制限なしの観客を集めて開催できていれば、かなり多額の経済効果をもたらすことになったでしょう。そう考えると、新型コロナが恨めしい。ただし、夏以降、ワクチン接種の効果が出てきて、観客数の制限がなくなれば、経済効果はより膨らむことになると考えられます」

 最も大きな効果をもたらすとみられるのが、阪神ファンによる飲食支出の増加で、約206.2億円に上った。

「デイリースポーツの記事によれば、阪神球団のネット調査に基づいた数値では『2015年の阪神ファンは930万~1000万人である』と推定されている。阪神ファンは優勝争いをして試合に勝利した際、例年に比べてかなり多い回数の祝杯を挙げることになります。今年は外での飲食を控えているので、家族でごちそうをいただき祝杯を挙げる回数が増えることになります」

 観客数の増加による効果は約7.58億円となった。

「観客数に制限があり、コロナの影響のない年と比べると経済効果がマイナスになる可能性が高い。セ・パ交流戦開幕前の1試合平均の観客動員は約7946人。現在と同じ観客制限が継続されるという予想のもとで、今年と同じ状況にあった昨年との差額を今年の経済効果として計算しています」

阪神百貨店の優勝セールは03年級

 阪神球団と同一グループの阪急・阪神百貨店や、商店街などの優勝セールの売り上げは、68.5億円となった。

「秋に優勝セールを実施すると、そのころにはワクチン接種の効果も出てきて、百貨店や大型小売店、商店街の営業も活発化すると想定される。大いに盛り上がると考えられます。03年優勝時、阪神百貨店(当時)は1週間の優勝セールで約39億円の売り上げを記録した。今回もそれと同程度の売り上げが期待できる。今回は、阪急百貨店も『優勝セール』を実施するかもしれない。その金額は阪神百貨店の約5割程度と仮定すると、19億5000万円となります。さらに、阪神と縁のある上新電機や尼崎商店街もセールを実施すると予想されるので、これらの店舗の売上増加額を約10億円と仮定しました」

■佐藤輝グッズなどバカ売れ

 球団にもたらされるテレビ放映権や監督、選手のメディア、CMなどの出演による収入増加は約20億円、グッズの売り上げは約10億円となった。

「優勝すると広告料、放映権料などの収入が増加するだけでなく、監督や選手のマスコミへの露出が増え、CM、座談会、講演、サイン会などへの出席の依頼が殺到するでしょう。グッズに関しては、ドラフト1位新人の佐藤輝明選手をはじめ、活躍した選手のグッズの売り上げは、かなりの額になると予想されます。たとえば、米球界から楽天に復帰した田中将大投手のグッズは、今季開幕前で数億円の売り上げを記録しています」

 一方、優勝パレードに関しては、コロナ禍を考慮して約7億円にとどまった。

「通常は大阪、神戸の街は盛り上がりますが、優勝パレードが中止になるかもしれないし、仮に挙行されても、密になる観客を制限することも考えられます。過去の優勝パレードの経済効果の半分程度であると仮定しました」

 こうした直接的な経済効果に加え、その直接効果に関する消費、投資による原材料の売上増加額である「一次波及効果」、さらに直接効果、一次波及効果に関係した企業、店舗などの売り上げが増え、それらの経営者、従業員の所得、配当などがプラスになることでの消費増加額である「二次波及効果」を加えると、約689億6722万円(総務省、内閣府作成の「全国産業連関表」を用いて算出)。このうち9割が関西地域でもたらされる経済効果と仮定した結果、約620億7050万円となった。

 16年ぶりに阪神が優勝すれば、コロナ禍で大打撃を受けている経済に、大きな恩恵をもたらしそうだ。

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