著者のコラム一覧
上昌広医療ガバナンス研究所 理事長

1968年兵庫県生まれ。内科医。東京大学医学部卒。虎の門病院や国立がん研究センター中央病院で臨床研究に従事。2005年から16年まで東京大学医科学研究所で、先端医療社会コミュニケーションシステムを主宰し、医療ガバナンスを研究。16年から現職。

東京五輪感染爆発の危機「抗原検査」では陽性者を見落とす

公開日: 更新日:

 6月23日、来日したウガンダ選手団の1人が空港検疫をすり抜け、その後、デルタ株に感染していたことが明らかとなっている。抗原検査を用いる限り、このような見落としは避けられない。

 なぜ、政府は抗原検査にこだわるのだろうか。それは、厚労省の都合を優先したためだ。コロナ流行以降、厚労省はPCR検査を抑制し、抗原検査の使用を推奨し続けてきた。令和2年度の第2次補正予算では、抗原検査の確保のため179億円が措置されており、大量の在庫を抱えている。何とかして使い切らなければならない。1月22日には、「無症状者に対する抗原簡易キットの使用」を推奨する通知を出している。ちょうど、米CDCが、無症状感染者に対する抗原検査の限界を示す論文を発表した時期に正反対の通知を出していたことになる。

 問題は、これだけではない。政府は、選手や関係者の行動を競技会場や選手村などに制限し、移動は専用車両を用いる方針を示し、「バブル方式」と称しているが、これも見当外れだ。

 それは、コロナ感染の多くがエアロゾルを介した空気感染によって生じるからだ。エアロゾルは、最大で3時間程度、感染性を維持しながら空中を浮遊し、長距離を移動する。五輪会場や選手村には、業者などさまざまな人々が出入りする。彼らの中に無症候感染者がいたら、エアロゾルを介して感染が拡大する。「バブル」など原理的に不可能だ。

 空気感染を防ぐには、徹底的な換気とPCR検査しかないが、政府に方向転換の気配はない。このままでは五輪中の感染爆発は避けられそうにない。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    「NHKの顔」だった元アナ川端義明さんは退職後、いくつもの不幸を乗り越えていた

  2. 2

    永野芽郁の「文春」不倫報道に噛みついたGACKTさんは、週刊誌の何たるかがわかっていない

  3. 3

    前田健太「ドジャース入り」で大谷との共闘に現実味 日本復帰より「節目の10年」優先か

  4. 4

    元NHK岩田明子は何をやってもウケない…コメントは緩く、ギャグはスベる、クイズは誤答

  5. 5

    ウクライナ出身力士 安青錦がすべてを語った…単身来日して3年、新入幕で敢闘賞

  1. 6

    小田和正「77歳の現役力」の凄み…現役最年長アーティストが守り続ける“プロ意識”

  2. 7

    奥さんが決断してくれた…元大関の小錦八十吉さん腎臓移植を振り返る

  3. 8

    今思えばゾッとする。僕は下調べせずPL学園に入学し、激しく後悔…寮生活は想像を絶した

  4. 9

    のんを襲った"後輩女優の二股不倫報道"の悲劇…カルピスCMめぐる永野芽郁との因縁

  5. 10

    Mrs.GREEN APPLEとディズニーのコラボに両ファン懸念…売れすぎた国民的バンドゆえの"食傷感"