元川悦子
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元川悦子サッカージャーナリスト

1967年7月14日生まれ。長野県松本市出身。業界紙、夕刊紙を経て94年にフリーランス。著作に「U―22」「黄金世代―99年ワールドユース準優勝と日本サッカーの10年 (SJ sports)」「「いじらない」育て方~親とコーチが語る遠藤保仁」「僕らがサッカーボーイズだった頃2 プロサッカー選手のジュニア時代」など。

【江東区有明】BMX中村輪夢を目当てに「希望の架け橋」に集まった人はマナーを守って観戦

公開日: 更新日:

江東区有明

 東京五輪も残すところ1週間。男子サッカーが準決勝進出を決めるなど、楽しみな競技はまだ残っている。

 8月1日に江東区の有明アーバンスポーツ競技場で行われた自転車・BMXフリースタイル・パークも、そのひとつ。

 前日の予選で2位につけた中村輪夢(ウイングアーク1st)のメダル獲得への期待が高まったからだ。

 同競技場にはスケートボード・男子ストリートの堀米雄斗(XFLAG)が金メダルを獲得した7月25日に訪れている。 

 この1週間で、会場を一望できる有明北橋が「希望の架け橋」と称されるほどの人気スポットになったという。

 再びこの地に向かった。

 BMXフリースタイル・パーク決勝の開始時間は午前11時20分。直前には同女子・大池水杜(みなと=ビザビ)のレースもあったが、実際に中に入って観戦できるわけではない。

 そこで、改めて有明・台場の五輪会場の全貌をつかむため、「ゆりかもめ」(東京臨海新交通臨海線)の豊洲駅からお台場海浜公園駅までの間を往復してみることにした。

 さすがは眺望抜群の公共交通機関だ。

 新豊洲駅~市場前駅間には選手村、有明テニスの森駅~有明駅間には有明体操競技場やテニスの森、東京ビッグサイト駅~青海駅間は聖火台のある夢の大橋といった具合に複数の競技関連施設がよく見える。

 会場がコンパクトに配置されているのも分かる。台場駅~お台場海浜公園駅の間からは、東京湾上のオリンピックシンボルも見えた。

 華やかなムードの傍らで、P&Gやオメガなど複数の公式スポンサーのパビリオンが設置されながら、公開休止になっている現実も目の当たりにした。

 やはり緊急事態宣言下の東京五輪は、複雑な要素が絡み合っているのだと再認識できた。

満員電車よりずっとまし

 30分ほどの鉄道の旅を終え、有明テニスの森で下車すると、競技中のBMX女子を生観戦しようと試みる人だかりができていた。

 人数的には50人程度だろうか。

 警備に当たっている福岡県警の警察官と駅員も見守っている。電車が来るたびに「出入口を開けてください」というアナウンスは入るが、五輪目当ての人を排除する動きは見られない。

「駅の真ん前にあるBMXレーシングの施設で競技が行われた29・30日はもっと大勢の方が来られたようです。我々としては乗降客が安全に乗り降りでき、駅が混乱しなければ問題ない。みなさん五輪を見たいでしょうし、気持ちよく帰っていただきたい」と駅員の1人が話していたが、その気配りを有難く感じた。

 筆者も中村の動向が気になり、ホームに残ってスマホで競技の様子を見ながら時折、カメラを向けた。

 午前8時からいるという都内在住男性が「ここは電光掲示板も見えるし、選手がジャンプする姿も撮影できる。本当に最高の体験です」と嬉しそうに話していたが、確かに世界最高峰の技術を垣間見られるのは本当に滅多にない。

 スポーツの魅力にはまった人が足を止めるのは、自然のなりゆきだ。

 この様子が「密になっている」と盛んに報道されているが、観戦者たちは互いに狭いながらも距離を取り、黙々と会場を見ているだけ。

 マスクを外して大声で叫んだり、食事をするような人間も皆無。豊洲方面行き電車が来るたび出入口を広く開け、迷惑にならないような配慮もしていた。

 この状況なら満員電車よりずっとましだ。

日の丸デザインの衣装で応援

「今はコロナ禍」「緊急事態宣言下」という意識を持ち、マナーを守っていたのは「希望の架け橋」に陣取った100人単位の人々も同じだったはず。

 五輪公式ショップで購入したという日の丸デザインの衣装を身にまとった増井孝充さんもそのひとり。

「宮城の女子サッカーも行きましたけど、有観客会場は雰囲気が違いましたね」と感慨深げに言う彼は、選手の一挙手一投足を凝視していた。

 警備側も、彼らの思いを尊重したいと感じたから見守ったのだろう。

 過去にサッカーW杯を7回を現地取材した筆者は、世界70カ国以上に足を運んでいるが、ここまで規律正しく、他者に気配りしながら振る舞えるのは日本人だけ、と言っても過言ではない。

 今回もコロナ対策と観戦ルールの徹底を呼びかければ、有観客でも混乱なく運営できたのではないか……。改めてそんな気持ちにさせられた。

 肝心のBMX男子の方は中村が1回目にミスを犯し、2回目にメダルを賭けて挑んだが、最終的には5位入賞。絶対的王者のローガン・マーティン(豪州)が頂点に立った。彼のジャンプをほんのわずか目にしたが、高さも華麗さも群を抜いていた。

「できることなら観客席で見たかった」と思った人もいただろうが、大半は満足そうにその場を去っていった。

「有明アーバンスポーツパークを五輪後も有効活用してほしい」という地元住民の意見も聞かれた。せめて大会期間中に入れなかった人が、見学できるような環境を整えることはできないものか。

 東京都には早急に善後策を考えてほしいものだ。

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