元川悦子
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元川悦子サッカージャーナリスト

1967年7月14日生まれ。長野県松本市出身。業界紙、夕刊紙を経て94年にフリーランス。著作に「U―22」「黄金世代―99年ワールドユース準優勝と日本サッカーの10年 (SJ sports)」「「いじらない」育て方~親とコーチが語る遠藤保仁」「僕らがサッカーボーイズだった頃2 プロサッカー選手のジュニア時代」など。

【代々木・原宿】57年前のメインエリアに足を踏み入れ感じた2度の東京五輪の「明暗」

公開日: 更新日:

代々木・原宿

 東京五輪も最終週に突入。ここまでの球技の成績を見ると、金メダルを獲得したソフトボールや4強進出の男子サッカーなど屋外競技はまずまず好調だ。

 しかし、室内競技の方は、1次リーグ全敗の男子バスケット、金メダル最有力候補・桃田賢斗NTT東日本)敗退のバドミントンなど苦戦が目立つ。

 ハンドボールも男女ともに厳しい情勢だ。男子は1日のポルトガル戦を制し、33年ぶりの五輪勝利を挙げたが、B組最下位が決定。女子も2日のノルウェー戦に25ー37で敗れ、1勝4分けのA組最下位に沈んだ。

 その舞台であり、1964年の東京五輪の水泳会場だった「代々木第一体育館」周辺を巡った。8月に入って猛暑が一団と加速している。外を少し歩くだけで汗が噴き出す。そんな灼熱の2日昼、路線バスで代々木公園へ向かった。

 山手通りと井の頭通りが交差する富ヶ谷交差点の停留所で下車し、5分ほど歩くと広大な緑の一帯が見えてくる。ここが、57年前は選手村だったというから感慨深い。

 まず、前回五輪後の跡地利用の一環として作られた「国立オリンピック記念青少年総合センター」へ足を延ばした。1965年1月に開業してから数回の改修を経て、現在に至っている。この日も制服姿の高校生の一団、サークル活動らしき大学生のグループがいて、通常稼働している様子。緊急事態宣言下の夏休みとは思えない風景だった。

代々木公園内にはワクチン大規模接種センターが

 続いて代々木公園の中へ。ライブサイト会場になるはずだった広大なエリアが、今は「コロナワクチン大規模接種センター」になっている。ただ、一般向けの大手町にあるセンターとは異なり、こちらは五輪関係者や警察・消防関係や五輪のボランティアなどがメイン対象という。前者には案内係がいたり、無料シャトルバスが運行されているのに、代々木にない理由が理解できた。

 五輪ボランティアの娘の接種に同行したという都内在住の母親は、「接種は個別ブースで行われ、冷房のよく効いたバスで休憩できるようになっていた」と言う。とはいえ、猛暑の中、地下鉄・代々木公園駅から10分程度歩くのは大変。敷地に入ってからも相当な距離がある。

 小池百合子・東京都知事の政治的判断でワクチン接種会場に転用されたわけだが、接種を受ける側にとっては、あまり好ましい環境とは言えないようだ。

「ライブサイトが開いていたら、大勢の人が来て『密』になっていたかもしれない。不安はありました。でも五輪期間中に何もないのもまた寂しい」と近隣住民も本音を吐露する。ここでもまたコロナ禍という特殊な状況下で行われている五輪の現実を目の当たりにさせられた。

岸記念体育会館は解体され更地に

 そこからハンドボール会場の「代々木第一体育館」へ向かった。

 他会場同様、周りはバリケードで覆われ、中には入れない。渋谷区神園町の歩道橋から施設の全貌を眺められるとあって、筆者が写真撮影をしている間にスマホを向ける人が2~3人いた。「五輪施設を写真に記念に収めたい」という気持ちがあってのことだろう。

 さらに渋谷側へ南下すると、かつて各スポーツ団体の総本山「岸記念体育会館」があった場所に五輪車両が出入りしている。

 2019年4月に「新国立競技場前」の「ジャパン・スポーツ・オリンピック・スクエア」が完成したのを機に日本オリンピック委員会などが新オフィスへ移転。岸記念体育会館は解体され、今は更地になっている。

 実は筆者がサッカー取材を始めた94年は、JFA(日本サッカー協会)もここに事務所を構えていた。長沼健・第8代会長体制でW杯初出場を目指していた当時も何度か足を運んだ。懐かしい日々が一瞬、蘇った。

JR原宿駅は人もまばら

 通りを挟んで正面が「代々木第一体育館」の正面入口。警備員に声をかけると「昨日ハンドの男子代表が勝ったんで本当に良かった」と嬉しそうに言う。確かに運営スタッフたちも、間違いなく日本サポーターなのだ。

 無言の応援を選手たちも心強く感じたからこそ、ハンド男子は33年ぶりの五輪白星を手にできたのではないか。

 仮に有観客開催だったら、熱狂的応援を力にして日本勢はもっと好成績を収めていたかもしれない。不本意な結果に終わった男子バスケやバドミントン、競泳も同様だろう。そこは、やはり悔やまれる。

 無観客開催で当てが外れたのは、JRの原宿駅も同様だ。

 7年越しの大改良が2020年3月に完了した同駅はこの五輪期間、大混雑するはずだった。しかし、夏休みの日中なのに人はまばら。

 それでも、コンビニの公式グッズコーナーは繁盛していたが、周辺の飲食店や衣料品店は苦労しているはずだ。

 57年前の五輪メインエリアに足を踏み入れてみて、2度の東京五輪の「明暗」を痛切に感じた。

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