著者のコラム一覧
鈴木良平サッカー解説者

1949年6月12日生まれ。東京都世田谷区出身。東海大卒業後の73年、ドイツの名門ボルシアMGにコーチ留学。名将バイスバイラーの薫陶を受け、最上級ライセンスのS級ライセンスを日本人として初取得。84-85年シーズンのドイツ1部ビーレフェルトのヘッドコーチ兼ユース監督。なでしこジャパン初代専任監督。98年福岡ヘッドコーチ。

中国戦敗退で「なでしこの懸案事項」が改めて浮き彫りになった

公開日: 更新日:

 2023年女子W杯(オーストラリア・ニュージーランド共催)の予選を兼ねたアジア杯(インド)の準々決勝で、日本女子代表(なでしこジャパン=世界ランク13位)はタイ(38位)を一蹴し、9大会連続のW杯出場を決めた後、当コラムに「準決勝、決勝と内容の伴った試合をやってアジア杯3連覇を成し遂げてアジア女王としてW杯本大会に臨んで欲しい」と書いた。

 しかし、準決勝の中国(19位)戦では、2-2からPK戦にもつれて中国に3-4で屈し、想定外の結果となってしまった。この中国戦で「なでしこの懸案事項」が、改めて浮き彫りになったといえる。

 なでしこは前半26分、左サイドからのクロスに反応したFW植木が、ニアサイドに飛び込んで頭で合わせ、ゴール右サイドネットに流し込んで先制した。

 植木は、1-1で迎えた延長前半13分にも、相手DFラインの裏をくぐり抜け、ダイビングヘッドでゴールを決めた。

完勝してもおかしくなかった

 前後半・延長を含めた120分の両チームのスタッツを見るとーー。

「ボール支配率 日本67%・中国33%」「総シュート数 日本22本・中国7本」「ゴール枠内シュート数 日本6本・中国2本」「ペナルティーエリア内タッチ数 日本30回・中国10回」

 日本が完勝してもおかしくない数字である。

 しかし、なでしこは後半の立ち上がりと延長後半の終了間際にゴールを決められ、PK戦では主将DF熊谷とDF南のCBコンビが相手GKにセーブされ、韓国(18位)が待ち受ける決勝に駒を進めることが出来なかった。

 植木は中国戦で2ゴールを決めたものの、ゴールシーン以外の「足で放ったシュート」が、なかなかゴール枠内に飛ばないのが気になった。これは、中国戦以外でも目に付いた。

 植木だけに限った話ではない。攻撃系の選手たちの「ゴールの枠内にボールを蹴り込む」決定力が、いささかお粗末だった点は否めない。

■精神的な不安定さが伝わってきた

 メンタル面を含めたゲームコントロールという部分についても言及したい。

 中国戦の延長前半に勝ち越した後、ある程度「守りたい」時間帯となったとき、どんなプレーをすればいいのか、120分で交代枠を3人しか使わなかったことも含め、チーム全体の戦い方に迷いはなかったか?

 後半早々に同点ゴールを決められた後、なでしこの選手たちは明らかに浮足立ってしまった。

 パスミスが増え、連係面の乱れも生じ、選手たちの精神的な不安定さが伝わってきた。 

 前半のうちに3点ほど決めておけば、1点を返されても動揺することはなかったと思うが、ともあれ後半早々に1ー1の同点に追い付かれたからと言って、バタバタすることはなかった。平常心のまま、なでしこらしいサッカーを続けて勝ち越し点、3点目……とゴールを積み重ねていけば、準決勝で姿を消すことはなかったはずだ。

■世界で勝つのは難しい

 試合後の主将・熊谷のコメントを拝見した。

「今大会はふがいなさしかない」「中国に勝てないようでは世界で勝つのは難しい」「選手もチームの成長しないと世界では戦えない」

 監督、スタッフ、もちろん選手たち、そして女子サッカーに関わるすべての人が、なでしこジャパンをどうレベルアップさせるか、本気になって考えないといけない。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    阿部巨人V逸の責任を取るのは二岡ヘッドだけか…杉内投手チーフコーチの手腕にも疑問の声

  2. 2

    渋野日向子に「ジャンボ尾崎に弟子入り」のススメ…国内3試合目は50人中ブービー終戦

  3. 3

    ソフトバンクは「一番得をした」…佐々木麟太郎の“損失見込み”を上回る好選定

  4. 4

    沢口靖子「絶対零度」が月9ワースト目前の“戦犯”はフジテレビ? 二匹目のドジョウ狙うも大誤算

  5. 5

    巨人・桑田二軍監督の電撃退団は“事実上のクビ”…真相は「優勝したのに国際部への異動を打診されていた」

  1. 6

    阪神「次の二軍監督」候補に挙がる2人の大物OB…人選の大前提は“藤川野球”にマッチすること

  2. 7

    国分太一が「世界くらべてみたら」の収録現場で見せていた“暴君ぶり”と“セクハラ発言”の闇

  3. 8

    恥辱まみれの高市外交… 「ノーベル平和賞推薦」でのトランプ媚びはアベ手法そのもの

  4. 9

    後藤真希と一緒の“8万円沖縄ツアー”に《安売りしすぎ》と心配の声…"透け写真集"バカ売れ中なのに

  5. 10

    沢口靖子も菅田将暉も大コケ不可避?フジテレビ秋ドラマ総崩れで局内戦々恐々…シニア狙いが外れた根深い事情