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佐々木裕介フットボールツーリズム アドバイザー

1977年生まれ、東京都世田谷区出身。旅行事業を営みながらフリーランスライターとしてアジアのフットボールシーンを中心に執筆活動を行う。「フットボール求道人」を自称。

“タイのメッシ”こと川崎チャナティップはアジア市場開拓のアイコンになるか(下)

公開日: 更新日:

 川崎に移籍したチャナティップは、変幻自在のドリブラーからバランスを意識したチャンスメイクに重きを置くスタイルの傾向が強まった。

 新天地のチーム事情はあるにせよ、彼がこの世界で生き抜くために転じた変化なのかも知れないが、筆者としては残念な思いもあるのだがーー。

■KAWASAKIブランドはASEAN市場へ拡がるか

 ともあれ“らしくない補強”でチャナティップを獲得した川崎の意図を筆者は「こうだろう」と踏んでいる。

 もちろん戦力として、は言うまでもなく、さらには東南アジア市場開拓へのアイコンとして期待したからだ、と。

 その市場へ向けたプレゼンテーション的な側面をも持つ、AFCチャンピオンズリーグ(ACL)が4月に開幕するが、チャナティップが出場する(グループIの川崎は4月16~40日にジョホールバル / マレーシアで集中開催)には、極めて壁が高いと思っていた。

 が、ひと先ずはジョホールバル行きの切符は、手中にしたと言っていいだろう。

 Jリーグでは、枠に縛られることがない身であるが、ACLでは外国人扱いとなる。

 枠は3+1(アジア枠)。現状の序列からみてレアンドロ・ダミアンとチョン・ソンリョン(アジア枠)は確定だろう。

 残る2枠を3人のブラジル人と争うと思われたが、ジェジエウは左膝のケガでいまだにリハビリ中であり、シミッチは行方不明。よって攻撃の良きアクセントとなっているマルシーニョと共に滑り込むことになる。 

 長らくASEAN進出という大命題を模索してきたクラブにとって、J王者としてアジア制覇へ向けた歩みも並行する中、チャナティップにとっては馴染むのに時間が必要なんて言っていられない裏事情もある。

継承した背番号18を自分色に染める

 訪れたスタジアムで「18 MITOMA」とプリントされたユニフォームを着るファンが実に多かった。

 移籍金として4億円もの置き土産を残し、欧州へと旅立った若き友に未だに心を奪われている証。ファンにとって「18」というのは今もなお、三笘薫の番号なのだろう。

 その背番号を背負い、自らの色に染められるかどうか、それはチャナティップの決意次第でしかない。

 ホームで行われた浦和戦後のインタビューでは、表情に彼らしい明るさが戻ってきた。より高みを求めた挑戦の日々の中、何か手応えを掴んだのかも知れない。

 まるで織姫と彦星のように引き寄せ合って生まれた移籍劇。仮にチャナティップのプレーが、期待に沿うものではなかったとしても、温厚な川崎ファンがソレを野次ることは考え難い。 

 しかし、アジアを意識した見方をすれば、事情は異なってくる。

 戦略的な二枚看板のひとりだったティーラトンが帰国し、台頭する東南アジア人選手の追随がない今、アジアの戦略的未来とチャナティップの未来とが、リンクしていることは言わずもがな、である。

■3枚目キャラと柔軟性あるマインド

 東南アジア人選手として初のJリーグ・ベストイレブンに輝いたのが2018年。しかし、それ以降は度重なる怪我もあって、目立った活躍は残せていない。

 とはいえ、タイ気質としては稀である、屈託のない3枚目キャラと柔軟性あるマインドで現在の地位を築いてきた。

 だからこそ、彼ならまたやってくれるんじゃないか、と期待してしまうのは、決して筆者だけではないだろう。

 もし、12月のJリーグアウォーズの会場で人を幸せにしてしまう、あの笑顔が見られることになれば、それは東南アジアと日本を繋ぐ、次なるステージへ向けたエナジーになるはずーーそう信じて疑わない自分がここにいる。

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