菊池雄星「3年42億円」ブルージェイズ入りの落とし穴 新天地の重圧はマリナーズの比じゃない

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 米メディアには良い決断だったと好意的に受け止められている。

 3年約42億円でカナダはトロントに本拠地を置くブルージェイズに移籍する菊池雄星(30=マリナーズからFA)に関してだ。

 メジャー3年目の昨年は7勝9敗、防御率4.41。自身初の球宴に選出されるなど前半戦こそ好調だったものの、後半戦に入って失速。シーズン終盤のプレーオフ争いでは、先発ローテから外れたほど。マリナーズでプレーした3年間の成績は15勝24敗と大きく負け越した。それでもマリナーズ残留なら1年約15億円は保証されていただけに、米メディアの多くは残留すると予想していた。ところが、オプションを破棄してFAに。年平均約14億円の3年契約を勝ち取ると、「キクチは賢い決断をした」(トレード・ルーモア)などと、手のひら返しで称賛している。

■残留の年15億円と変わらない額

 マリナーズに残留した場合の年15億円とさほど変わらない額の3年契約を結んだのだから、金銭面では「賢い決断」かもしれない。しかし、「3年42億円」という金額が、結果として自らのクビを絞めることにならないか。

 今回の契約を勝ち取った代理人のスコット・ボラス氏は「左腕で97マイル(約156キロ)を投げられる投手は何人いる?」と話していたとはいえ、問題はその「156キロ」を効果的に、なおかつコンスタントに使えるかどうかだろう。

 菊池の最大の欠点といわれているのが、移ろいやすいメンタル。日刊ゲンダイ連載中のメジャースカウトによれば、「キクチはいいときは手が付けられないが、つまずくと腕が振れなくなる」「打ち込まれるとうなだれたり、腕の位置を気にしたりして、マウンド上でクビをひねるしぐさが目立つ。要するに気持ちが弱い」という。後半戦の不調も多分に気持ちの弱さが原因と指摘していた。

■フォームをコロコロ変える

 西武時代の女房役だった炭谷銀仁朗(現楽天)は、菊池の渡米前年の2018年、日刊ゲンダイの取材にこう語っていた。

「とにかくフォームをコロコロ変えるんですよ。結果が出ていないときならわかるんですが、好投しているときでもなぜかフォームをいじる。結果を出した去年(17年)も、気付かないレベルで細かくフォームをいじっていましたからね」

 好調時でも「フォームをコロコロ変える」のは、向上心というより、このままで本当に大丈夫なのかという不安の表れ。だからこそ炭谷も心配していたのだろう。

 菊池のそんな気の弱さが、新天地への移籍によって果たして解消されるのかどうか。

ワールドシリーズ制覇を予想

 新天地のブルージェイズは、マリナーズと比べてはるかに戦力が充実している。昨季、大谷と争って48本塁打でタイトルを獲得したゲレロを筆頭にスタメンに20本塁打以上が6人。打線が強力な上、昨季14勝のガウスマン(ジャイアンツからFA)を獲得するなど投手陣も充実している。今季のワールドシリーズ制覇を予想する米国人記者も多い。

 菊池は現時点で先発5番手の位置付け。マリナーズでは失速した後半戦でローテ落ちしたが、本気で世界一を狙っている球団だけに、見切りの早さはおそらくマリナーズの比じゃない。

 おまけに14億円の平均年俸は、先発5番手の相場の倍近い金額だ。期待の大きさの表れといえるだけに、金額に見合うような結果が出なかったときの反動は大きい。ブルージェイズ同様、獲得を視野に入れていたヤンキースメッツのニューヨーク2球団ほどではないにせよ、ファンやメディアからのブーイングは覚悟した方がいい。

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