著者のコラム一覧
元川悦子サッカージャーナリスト

1967年7月14日生まれ。長野県松本市出身。業界紙、夕刊紙を経て94年にフリーランス。著作に「U―22」「黄金世代―99年ワールドユース準優勝と日本サッカーの10年 (SJ sports)」「「いじらない」育て方~親とコーチが語る遠藤保仁」「僕らがサッカーボーイズだった頃2 プロサッカー選手のジュニア時代」など。

(4)三笘薫や上田綺世ら「東京五輪世代」が3.24オーストラリア戦のカギを握る

公開日: 更新日:

 3月24日の最終予選大一番・オーストリア戦に向け、日本代表がシドニー入りしてから1日が経過した。21日は現地午前11時(日本時間同9時)から、オーストラリアキラーの浅野拓磨(ボーフム)ら選手4人がオンラインの取材対応を行った。

 2021年11月のオマーン戦(マスカット)で強烈なインパクトを残し、伊東純也(ゲンク)の決勝弾をアシストした三笘薫(サン・ジロワーズ)も参加。「代表の未来が決まる試合。豪州戦に全力でのぞみたい」と語り、凄まじい闘争心と勝利への渇望を押し出した。

■三笘に沸き起こった「左サイド先発待望論」

 三笘といえば2020~2021年の夏にかけて活躍した川崎時代は「ヌルヌルドリブル」と称される独特の突破力を駆使し、対峙する敵を常に脅威に陥れていた。

 森保一監督も、ベルギー移籍で自信を深めた彼を満を持して招集。苦戦を強いられたオマーン戦の切り札として後半頭から起用し、流れをガラリと変えることに成功した。

「左サイド先発待望論」も一気に高まり、本人も定位置を取りに行く構えだったが、2022年に入って右足首を捻挫。1月下旬からの中国、サウジアラビアとの前回シリーズの招集は断念せざるを得なかった。

「後悔なくプレーして勝利する」

 それだけに今回、三笘も意気軒高なはずだ。

「オマーン戦も日本サッカーのターニングポイントになると思っていたし、その結果が今にも繋がった。先輩たちが繋いできた結果を自分たちが繋ぐため、自分たちの未来のため、僕自身の夢のためにも、いろんな人たちの思いがかかっている試合。後悔なくプレーして勝利できれば嬉しい」と筑波大出身のインテリらしい言い回しで期待感を抱かせた。

 その三笘や上田綺世(鹿島)ら東京五輪世代が、オーストラリア戦のカギを握るのは間違いない。

 日本代表は、夕方(現地午後5時15分=日本時間同3時15分)からシドニーFCの本拠地ネットストラタ・ジュビリー・スタジアムで現地初練習を消化した。もちろん大学選抜時代からの盟友である三笘、上田の2人も参加。ランニング時には笑顔で頻繁に会話を交わすなど絆の強さを伺わせた。

■若手の活躍で世代交代が加速する

 彼らが揃ってゴールに絡む仕事を果たせば、森保監督が前々から言い続けていた世代交代も一気に加速するはず。

 2018年ロシアW杯切符をつかんだ2017年8月のオーストラリア戦(埼玉スタジアム)で浅野と井手口陽介(セルティック)がゴールを奪ったように若いアタッカー陣の動向に注目したい。

 この練習前に筆者らの取材グループは、滞在先近くのこじゃれた中華料理店でランチを摂り、ボタニー湾近くのブライトン=サンズ・ビーチに立ち寄って英気を養った。  

 美しい砂浜、青い海……遠くに見える繁華街の高層ビルを眺めると「シドニーにいる」という現実を改めて実感する。3日後の最終決戦への気分も大いに高まった。

JFA技術委員会・反町委員長との再会

 トレーニング開始前には、元日本代表FW田代有三さんを中心とした在シドニー日本人サッカーコミュニティーの総勢240人がスタンドに集結。長友佑都(FC東京)らスター選手たちが来るのを今か今かと待っていた。

 その中には、田代さんが運営するMATE(マイト)FCでパートタイムコーチを務める元Jリーガーの和田倫季(ロックデール・サンズ)、山田満夫(ウーロンゴン・ユナイテッド)の姿もあった。

 長野・松本市出身の筆者にとって2013~2018年に松本山雅に在籍した山田は、とても懐かしい存在である。帯広北高校からプロ入りし、翌2014年にいったん松本を離れて仙台大へ進学。卒業後の2018年に再加入するという興味深いキャリアを歩んだ選手である。

 当時の指揮官である日本サッカー協会技術委員会の反町康治委員長と久しぶりの再会を果たし、「ソリさんと会えて何より嬉しかった」と本人も目を輝かせた。

 天然芝グランドもクラブハウスもない中、松本山雅に関わる全員がガムシャラに上を目指した2013年の思い出話にも花が咲いた。

■敵地オーストラリア戦未勝利を打破

「当時のことはよく覚えています。フィジカルコーチのエルシオ(現相模原)に物凄く鍛えられたし、(チームの)先輩にもすごくお世話になった。また松本に行きたいです」と山田は声を弾ませた。

 日本代表は、彼のような地味にコツコツ努力してきた選手たちの頂点にある存在。だからこそ、オーストラリアで簡単に負けてはいけない。

 日本サッカー界の意地とプライドに賭け、アウェーのオーストラリア戦未勝利という有難くないジンクスを打ち破って欲しい。それが森保日本に課された責務でもある。(つづく)

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