著者のコラム一覧
元川悦子サッカージャーナリスト

1967年7月14日生まれ。長野県松本市出身。業界紙、夕刊紙を経て94年にフリーランス。著作に「U―22」「黄金世代―99年ワールドユース準優勝と日本サッカーの10年 (SJ sports)」「「いじらない」育て方~親とコーチが語る遠藤保仁」「僕らがサッカーボーイズだった頃2 プロサッカー選手のジュニア時代」など。

(1)W杯へ大一番のオーストラリア戦 日本代表よりもひと足先に現地シドニー入り

公開日: 更新日:

 2月1日のカタールW杯最終予選・サウジアラビア戦(埼玉)を2-0で勝利し、W杯7大会連続出場に王手をかけた日本代表。24日の敵地・オーストラリア戦に勝てばW杯出場が決まる。

 その大一番を現地で見ないわけにいかない。筆者は、2021年11月のオマーン遠征に続き、コロナ禍2度目の海外取材を決意。代表チームよりも一足先に日本を出国し、紆余曲折を経て18日夜にシドニー入りした。

ワクチン3回接種者は帰国後に隔離なし

 オマーン取材時は、帰国後に10日間の隔離があったが、今回はワクチン3回接種者は隔離なし。ただ、オーストラリア戦の取材申請時点の2月中旬は、そういう条件ではなかったので数日間の自宅待機も仕方ないと覚悟しながら準備を進めた。

 最初の関門はビザの取得。これまでオーストラリアには5回以上行っているが、いずれも観光用のイータス(ETAS)を取る形で難しくなかった。しかし、今回は「サブクラス400」という短期商用ビザを取得するように日本サッカー協会から義務付けられた。

 承認まで最長2週間かかることもあると聞き、3月頭から急いで着手したのだが、オンラインの記入が18ページもあり、しかも難解な英文の連続。頭を抱えてしまった。

 翻訳ソフトを駆使して最後までたどり着いたと思いきや、今度は預金残高証明書、会社推薦状、旅程表などの添付を求められた。

■申請翌日のビザ発給メールに拍子抜け

 会社推薦状は、日刊ゲンダイのフォーマットにサインなどをもらい、旅程表もエクセルで作成したが、預金残高証明書は金融機関へ行くしかない。調べたところ、メガバンクは早くても2日、場合によっては1週間かかるところもあるという。 

 ゆうちょ銀行は即時発行と分かり、すぐさま書類を取得。全てのアップロードを済ませ、約2万7000円のビザ代のカード決済まで完了した。すると翌日には発給のメールを受領。これには正直、拍子抜けした。

 次なる関門はPCR検査。前回オマーン取材の際にも利用した1万6000円の恵比寿のクリニックに行くか、もっと安いところを探すか、いろいろスッタモンダした。

 オーストラリアは出国72時間以内のPCR検査のみならず、24時間以内の定性抗原検査でも入国可となったため、格安のクリニックを使えないか、調べてみると経由地のシンガポールは出国48時間以内のPCRのみ。となれば、やはりリスクは冒せない。

入国事前申請(DPD)記入で勘違い……

 全て自腹を切ることになるフリーランスには痛いが、今回も確実な恵比寿でのPCR検査を選択。出発前日の16日昼に検査し、2時間半後には陰性証明書を受け取った。

 続いてデジタル・パッセンジャー・ディクリアレーション(DPD)の入力である。

 これは2月15日から始まったオーストラリア入国の事前申請。搭乗便や滞在先、直近14日以内の渡航歴などを記載し、ワクチン接種とPCR陰性証明書を登録する。

「サブクラス400」のビザ申請と同様に質問も多岐に渡った。

 その中に「豪州を経由して別の国へ行くか」というものがあり、筆者は「経由便で入国」と勘違い。そのままいったん登録してしまった。

 間違いに気づき、再度やり直したのだが、このミスが到着時に影響するとは想像しなかった。

■タイガービールを味わう幸せな時間

 迎えた17日夜。ガラガラの羽田空港でチェックイン。女性係員は「3月から水際対策が緩和された影響でお客様は増えています」と言っていたが、羽田→シンガポール間は空席が目立ち、筆者も3列シートぶち抜きで横になって寝ることができた。

 約6時間後にシンガポールに到着。同国はコロナ対策が厳格と言われていたので、あちこちで書類確認があってもおかしくないと身構えたが、一切、何もなし。ラウンジも普通に使え、名物のラクサに舌鼓を打ちながら、地元銘柄のタイガービールを味わう幸せな時を過ごした。

 約7時間のシドニー便は搭乗率約50%。豪州の大学生のグループなど大挙して乗り込んできて、ウクライナ情勢不安の影響は感じられない。

3週間前からロシア上空はフライト不可

 偶然にも日本人の女性CAが1人いて、最新事情を聞くことができた。

「この3週間でロシア上空経由が不可能になり、欧州~アジア移動にシンガポール経由を選択する方が増え、お客さんが多くなりました。コロナ規制も緩和の方向で人の流れも戻ってきましたね」と彼女は優しい笑顔を見せ、着陸直前にはメッセージカードを手渡してくれた。細やかな心配りに大いに癒された。

 18日夕方にシドニー空港に到着。機外のパスポート読み取り機にトライしたが、上手くいかないので仕方なく入国審査場の列に並んだ。

 筆者の順番が来ると男性係官の表情が急に厳しくなった。

 周りは瞬く間に終わっているのに何事か? といぶかっていると彼は検疫書類を取り出し、いろいろと質問してきた。

 内容は事前申請のDPDに出てきたことばかり。どうやら日本出発前にミスした内容が更新されていなかったのだ。

日本も「開国」に向けて改善が必要と痛感

 バゲージクレーム前でも、自分だけがワクチン・PCR証明の提示を求められ、不安は募るばかり。無事に出国ロビーに出られた時には、安堵感でいっぱいになった。

 通常だとそのまま電車で滞在先へ直行するのだが、その前に空港でやるべきことがあった。

 それは、帰国時のPCR検査場を確認することである。

 出国ロビー前のテントへ立ち寄って尋ねると「検査から書面発行まで約2時間。79オーストラリアドル(約7000円)」との説明。予約不要で便利だと感じた。

 こういった施設を成田空港や羽田空港にも作ってくれたら、もっと迅速に、もっと安く検査ができる。日本も「開国」に向けて改善が必要だと痛感した。(つづく)

【連載】日本vsオーストラリア コロナ禍のアウェー戦取材戦記

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