著者のコラム一覧
鈴村裕輔野球文化学会会長・名城大教授

1976年、東京都出身。法政大学博士(学術)。名城大学外国学部教授。主な専門は政治史、比較思想。野球史研究家として日米の野球の研究にも従事しており、主著に「MLBが付けた日本人選手の値段」(講談社)がある。スポーツを取り巻く様々な出来事を社会、文化、政治などの多角的な視点から分析している。アメリカ野球学会会員。

WBC3月開催は機構、選手会、経営者、代理人の“妥協”の産物だった

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 1990年代後半に「野球のワールドカップ」という議論が起きて以降、「実現するのは早くても2010年代」といわれていた国際大会は、大方の予想に反し、06年にWBCとして結実した。

 米国でのテレビ視聴率の不振や関心の低さからすぐに廃れると思われていた大会も、今回で5回目を数える。当初は興行成績の低調さが先行きを不安視させる要因の一つであったものの、17年の第4回大会では総収益が第1回の約8.5倍となる推定1億1000万ドルに達し、着実に成長していることが分かる。

 だが、依然として解消されない問題もある。今回は英国やチェコなど、欧州から本戦に初出場する国が増えたとはいえ、予選への参加国数の少なさは、野球の国際化を標榜するWBCが十分機能していないことを示唆する。

 大リーグの公式戦開幕直前の3月中旬という時期に大会を行うことも、開始直後から問題とされながら、今日に至るまで改善されていない課題だ。

 オフシーズンも野球の話題が途切れないように各種の表彰や催事を行うというのが、大リーグ機構の戦略である。この観点からすれば、WBCの開催時期は公式戦開幕直前ではなく、ワールドシリーズ終了後の11月や12月などオフシーズンの開催が機構の方針にも適することになる。

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