著者のコラム一覧
鈴村裕輔野球文化学会会長・名城大教授

1976年、東京都出身。法政大学博士(学術)。名城大学外国学部教授。主な専門は政治史、比較思想。野球史研究家として日米の野球の研究にも従事しており、主著に「MLBが付けた日本人選手の値段」(講談社)がある。スポーツを取り巻く様々な出来事を社会、文化、政治などの多角的な視点から分析している。アメリカ野球学会会員。

WBC3月開催は機構、選手会、経営者、代理人の“妥協”の産物だった

公開日: 更新日:

 何より、オフシーズンの開催であれば、選手という最大の商品が公式戦で活躍する前に故障するといった事態を防ぐことが出来るのだから、WBCへの選手の派遣に消極的な球団経営者にとっても悪い話ではない。

 しかし、機構とともにWBCの主催者に名を連ねる大リーグ選手会にとって、オフシーズンは契約更改の時期でもあり、去就そのものが定まらない選手もいる中での大会の開催には同意しがたいというのが実情である。

 長期契約を結んでいる選手の場合であっても、オフシーズンには家族とともに過ごす時間を十分取ったり、趣味を満喫したり、さらに自らが設立したり関わっている慈善団体の活動に力を入れたいといった個人の時間が最優先される。

 球界に大きな影響力を持つ代理人にとってもWBCは悩ましい存在であり、オフシーズンであれ3月であれ、顧客である選手が大会に出場して故障することは大問題となる。しかも、1年間の疲労が蓄積された状態のオフシーズンの開催は、ケガの可能性を高める。

 こうしてオフシーズン開催論は、球界の世論の多数派を形成しないまま今に至っている。現行の3月の開催は、機構、選手会、経営者、代理人の思惑という、大リーグ内の事情を反映した妥協の産物であり、他の国や地域は事態を傍観するのみなのである。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    「時代に挑んだ男」加納典明(25)中学2年で初体験、行為を終えて感じたのは腹立ちと嫌悪だった

  2. 2

    ソフトB近藤健介の原動力は「打倒 新庄日本ハム」…憂き目にあった2022年の“恩返し”に燃える

  3. 3

    ドジャースが欲しがる投手・大谷翔平の「ケツ拭き要員」…リリーフ陣の負担量はメジャー最悪

  4. 4

    “お荷物”佐々木朗希のマイナー落ちはド軍にとっても“好都合”の理由とは?

  5. 5

    参政党が消せない“黒歴史”…党員がコメ農家の敵「ジャンボタニシ」拡散、農水省に一喝された過去

  1. 6

    遠野なぎこさんを追い詰めたSNSと芸能界、そして社会の冷酷無比な仕打ち…悲惨な“窮状証言”が続々

  2. 7

    巨人・田中将大「巨大不良債権化」という現実…阿部監督の“ちぐはぐ指令”に二軍首脳陣から大ヒンシュク

  3. 8

    藤浪晋太郎に日本復帰報道も、古巣阪神出戻りは「望み薄」…そして急浮上する“まさか”の球団

  4. 9

    巨人・田中将大を復活させる「使い方」…先発ローテの6番目、若手と併用なんてもってのほか

  5. 10

    自民・鶴保失言「運のいいことに地震」で苦戦の二階ジュニアに赤信号…参院選“仁義なき紀州戦争”決着か