世界各国にこれだけの「サッカー女子代表はつらいよ」…男子のクレージーさとは全く別物

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欧州ビッグ5は格安でテレビ放映決定

 もう一つ大きな問題となったのが放映権だ。放映権はFIFAのドル箱。これも男子並みに望んできた。でも各国のテレビ局が提示してきた金額は、男子の大会にはるかに及ばなかった。例えばイタリアの入札額は30万ユーロ(4690万円。22年男子W杯には1億6000万ユーロを支払った)、イギリスが提示したのは900万ユーロ(約14億円。22年男子大会の約8%)。インファンティーノ会長はこれに激怒し「女性蔑視」として「もっと金を出さなければメディアを締め出す」と脅したんだ。

 ヨーロッパのビッグ5(フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、イギリス)のいずれの国も6月に入ってからも放送が決まっていなくて、やっと決まったのが6月14日。背に腹は代えられず、FIFAの当初の言い値よりかなり低い額で契約したらしいけど(金額は明かされていない)、代わりに各局に女子サッカーのコンテンツを増やすことを約束させた。まあ、条件というよりは値引きに応じた言い訳だよね。

 さてここで、みなさんの日本が問題になる。このヨーロッパの契約により、日本はW杯の放映予定がない唯一の主要国となってしまったんだ。FIFAも日本との交渉までには手が回らなかったのか値下げも提示されず、このままでいくと日本では試合が見られなくなってしまう。唯一視聴できるのはFIFA公式ページのストリーミングだけ、でも、日本語の実況や解説はないし、全ての試合が放映されるわけじゃない。日本のこの現状には世界もびっくりしている。世界では「唯一放送されない危機のある国は日本」「11年女子W杯王者の日本、放映権購入のため資金調達へ」などと報じられている。日本にとって恥ずべきことだし、今後の女子サッカーの衰退につながるんじゃないかと心配になるね。テレビ局の予算とFIFAの言い値の差額をクラウドファンディングするなんて動きがあるみたいだけど、かつて女王にも輝いた日本のこの現状が、一番クレージーかもしれないね。

▽リカルド・セティオン 1963年生まれ。サンパウロ出身。ブラジルメディア以外に英「ワールドサッカー」、伊「グエリン・スポルティーボ」など幅広く執筆。FIFA職員を経て98年、2002年W杯ではブラジル代表付きの広報を務めた。現在もジーコ、ロナウド、ロナウジーニョ、カフーら大物との親交も厚い。自他ともに認める「サッカークレージー」。

▽とねがわ・あきこ 埼玉県出身。通訳・翻訳家。1982年W杯でイタリア代表タルデッリに魅せられ、89年にイタリア・ローマに移住。「ゴールこそ、すべて」(スキラッチ自伝)など著書・訳書多数。

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