米留学決断の佐々木麟太郎を待ち受ける“過酷ノルマ”…年間100試合、クビ制度、そして学業大前提

公開日: 更新日:

実戦経験を積む機会が凄まじく多い

 野球部の活動システムも日本とはまったく異なる。日本の場合、1年間で公式戦は20試合程度だが、アメリカの場合は2月から5月末までに「50~60試合が組まれている」という。

 それに加え、6月から8月の夏季休暇中は希望者が参加できるサマーリーグがある。選手個々の実力に応じて夏季限定のチームに振り分けられ、これも40~60試合ほどが行われる。

「(公式戦とサマーリーグの合計で)年間100試合以上に出場する選手もいます。実戦経験を積む機会が凄まじく多いのが特徴です。そのため全体練習の時間は少なく、だいたい2~2時間半くらい。練習中に掛け声を出さなくていいのも大きな違いです。個人練習の時間を多く取れるから、自分で考えながら課題に取り組めます。僕はサマーリーグでボストンやワシントンのチームに参加しました。その間はホストファミリーの家に滞在します。サマーリーグでは州をまたいだ移動もあるため、肉体的にはけっこうハード。たとえば試合が22時に終わってからバスに揺られ、朝5時に宿泊先に着いて、また15時に集合ということもありました(笑)」

 大山さんは試合日程だけではなく、指導者のスタンスが全く違うことにも驚いたそうだ。

「コーチが声を荒らげて怒ったりすることはまずありません。いいプレーをしたらとにかく褒めてくれる。そうやって選手を伸ばしていくやり方です。高校時代の僕は叱られないように完璧を目指そうとして、おどおどしながらプレーしていたフシがありましたが、アメリカではノビノビと楽しくやれています」

■クビは自己責任

 指導者にカミナリを落とされることもなく、自分自身の課題にノビノビと取り組めるとはいえ、安閑としてはいられない。アメリカの部活動には「カット」と呼ばれる、いわゆる「クビ」制度が存在するからだ。

 1シーズンに約50試合も消化するのだから、各校が膨大な数の部員を抱えているかといえば、実はそうではない。基本的に登録人数の25人に若干名が加わるくらいで、多くても40人ほど。毎年、新入生が入ってくるため、8月から9月ごろにかけて一部の部員が「カット」されていく。

「実力が求められた水準に達していなかったら、カットされてしまいます。でも、そうなったら自分のレベルに合った学校に転校するのが一般的です。アメリカは転校にあまりネガティブなイメージがありませんから」

 自主性に任されているだけに、結果が出なかったときの責任はすべて自分が負わなくてはならない。「クビ」は自己責任なのだ。

 勉強や異文化交流はもちろん、麟太郎が飛び込んでいく環境は決して甘くない。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    日本は強い国か…「障害者年金」を半分に減額とは

  2. 2

    SBI新生銀が「貯金量107兆円」のJAグループマネーにリーチ…農林中金と資本提携し再上場へ

  3. 3

    巨人が李承燁コーチ就任を発表も…OBが「チグハグ」とクビを傾げるFA松本剛獲得の矛盾

  4. 4

    「おこめ券」でJAはボロ儲け? 国民から「いらない!」とブーイングでも鈴木農相が執着するワケ

  5. 5

    NHK朝ドラ「ばけばけ」が途中から人気上昇のナゾ 暗く重く地味なストーリーなのに…

  1. 6

    侍Jで加速する「チーム大谷」…国内組で浮上する“後方支援”要員の投打ベテラン

  2. 7

    石破前首相も参戦で「おこめ券」批判拡大…届くのは春以降、米価下落ならありがたみゼロ

  3. 8

    阿部巨人に大激震! 24歳の次世代正捕手候補がトレード直訴の波紋「若い時間がムダになっちゃう」と吐露

  4. 9

    ドジャース首脳陣がシビアに評価する「大谷翔平の限界」…WBCから投打フル回転だと“ガス欠”確実

  5. 10

    高市政権の物価高対策「自治体が自由に使える=丸投げ」に大ブーイング…ネットでも「おこめ券はいらない!」