漫画『おおきく振りかぶって』の作者ひぐちアサさんが高校野球愛を激白!「原点は88年の『さわやか旋風』」
「それでも憧れの場所であり続けてほしい」
──エピソードがとにかくリアルなのですが、どれくらい取材したのでしょうか。
「子供が生まれる前は、呼ばれたらどこへでもホイホイと行っていました。高校野球の監督はみなさん協力的で『こんな面白いところがあるからおいで』と声をかけてくれる。2016年まで(埼玉県立)杉戸高校監督だった高橋薫先生を中心とした集まりで他校の監督さんを紹介してもらったり、講演を聴きに行き、自己紹介をして打ち上げや集まりに呼んでもらったり。いろんな場所に乗り込んで行くうち、知り合いの方が増えていきました」
──母校である浦和西高校にもよく足を運んだ。
「連載を始める1年以上前、当時はまだインターネットも普及していないので新聞で母校の公式戦の日程を調べて球場へ行き、『いつか高校野球漫画を描きたいOGです』と言って応援の仲間に入れてもらいました。その後、今に至るまで、ずっと代々の父母会と共に母校を応援しつつ、いろいろなネタをもらっています」
──高校野球のどんなところに着目していますか。
「思ってもみないことが起こるところですね。今年のセンバツの浦和実業は、市立浦和と同じく母校のすぐそばにある高校で、見ていて楽しかったです(初出場でベスト4)」
──ひぐち先生にとって高校野球とは。
「私が子供の頃に見ていた体罰や上下関係、きつい練習をとにかく長時間やるというようなことは、今は通用しない。練習方法も髪形も(笑)どんどん進化しています。高校野球を好きな人たちが、高校野球をいい方向へ育てているんでしょうね。気候も変動して子供も減っていくけど、その中で高校野球全国大会は憧れの場所であり続けてほしいと思っています」
(聞き手=中西悠子/日刊ゲンダイ)
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▽ひぐちアサ 1970年、埼玉県浦和市(現さいたま市)出身。中学・高校でソフトボール部に所属。法政大では心理学を学ぶ。2003年、「アフタヌーン」で高校野球をテーマにした「おおきく振りかぶって」の連載を開始。スポーツ科学やメンタルトレーニングを取り入れた作風が評価され、06年に「第10回手塚治虫文化賞新生賞」、07年には「第31回講談社漫画賞」(一般部門)を受賞した。主人公の三橋が通う西浦高校の背景描写には、母校の浦和西高校がそのまま使われている。