【傘寿特別対談】辛口サッカー解説者 セルジオ越後×辛口ジャーナリスト・評論家 佐高信

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子どももクラブも社会が育てる

佐高 セルジオさんの言葉、「僕の恩師は社会」というのは名言だと思います。

セルジオ 僕の恩師は社会。学校じゃない。ブラジルでは近所の大人が普通に叱るし、サッカーは路地で覚える。サッカーはスポーツじゃなくて遊びだった。遊びの中で、人との距離感やフェアさを覚える。

佐高 今は社会が子どもを育てなくなった。その代わり、会社が全部引き取って“会社が社会”になって……。私はそれを「社畜」と書いてきました。社員食堂、社宅、飲み会、休日まで会社。会社以外の世界を奪う構造です。敗戦前は「公=国」で、極端な天皇制主義教育だった。それが崩れた後、新しい「公」が育たず、会社がその穴を埋めた。

セルジオ 社会で育てる発想が弱くなってしまっている。

佐高 家の価値観もあるでしょうか。日本では「私生児」と言うけれど、イタリアでは「インノチェンティ(罪なき子)」。社会で育てる前提があるかどうかの違いです。

セルジオ それは日本のサッカー文化にも影響しているかもしれない。チームを育てているのは“社会”じゃなくて、“会社”が育てている。

佐高 リーグは「地域密着」を掲げるけれど、実態はスポンサー密着。地域は看板、財布は企業。それじゃ文化にならない。

セルジオ 話は飛ぶけど、国内有数のタオル産地が衰退してきているのは知っていますか?

佐高 そうなんですか?

セルジオ 日本人が引っ越しの挨拶をしなくなったんですよ。昔はタオルを持って回った。今はマンションで誰とも話さない。ほかにも、昔はスナックだったものが、今は個室のカラオケに。偶然の出会いがなくなった。

佐高 地域の血流が止まる。

セルジオ 僕は日本に来て、この国は人のつながりが財産なんだと学びました。日本では、知人を紹介するのは、財産を分け与えるようなものでしょ? その人のつながりという日本の武器が消え出した。

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