著者のコラム一覧
元川悦子サッカージャーナリスト

1967年7月14日生まれ。長野県松本市出身。業界紙、夕刊紙を経て94年にフリーランス。著作に「U―22」「黄金世代―99年ワールドユース準優勝と日本サッカーの10年 (SJ sports)」「「いじらない」育て方~親とコーチが語る遠藤保仁」「僕らがサッカーボーイズだった頃2 プロサッカー選手のジュニア時代」など。

鈴木彩艶〈後編〉LINEアイコンを代表から浦和に戻した…23歳守護神の謙虚さの礎(浦和ジュニアユース・ユース元監督・工藤輝央)

公開日: 更新日:

「左手がパンパンに腫れて3倍くらいに」

 ──欧州5大リーグで20歳そこそこの若い日本人GKが定位置を確保するのは異例のことです。

「ベルギーよりイタリアの方がレベルが上がりますし、守備の国というのもあるので、どれだけスムーズに入っていけるのかを興味深く見守っていました。本人が言っていたのは、シントトロイデンの時よりも相手のシュートレンジが広く、想定外が多いと。だからこそ、対応力が必要になると意識を高めているようでしたね」

 ──2025年11月のACミラン戦で左手を複雑骨折した時は驚きました。

「日本に帰ってきて、浦和の練習拠点である大原にも来ましたし、僕自身も食事をしましたね。手術3日後に会った時には左手がパンパンに腫れて3倍くらいになっていた(苦笑)。それでも本人はメチャクチャ前向きで『左手が使えないので左右のバランスを考えながら鍛えます』と明るい表情で話していました。2度目に会ったのは、リハビリを終えてイタリアに戻る直前。『空中のボールに対して落下点に入って片手だけ出す練習を始めようと思います』と彩艶は話していました。それだとバランスが崩れる可能性もありますけど、まず目を慣れさせて、片手でも反応できるようにしようと考えたんでしょうね。サッカーのできない時間をプラスに生かすことができるのは、やっぱり考える力が高いからなのかな。数々の挫折を繰り返して今に来ている分、彼は強いですね」

 ──そういう成長過程や思考スタイルは、同じイタリアでプレーしていた中村俊輔・日本代表コーチと通じるところがあるようにも感じます。

「そうですね。僕は俊さんとは2024年JFA公認Proライセンス講習会の同期でいろいろ話しますけど、考える力が強いですよね。そこは彩艶と同じ。俊さんがパルマに海外研修に行ったので彩艶のことも可愛がってくれていますし、リスタートやPKの守備に関してのアドバイスをもらえる。W杯本番は心強いと思います」

 ──鈴木彩艶選手が初めて挑むW杯への期待は?

「本人は5大会出ると言っていますよ(笑)。能活さん(川口=磐田GKコーチ)、楢崎正剛さん(名古屋GKコーチ)、川島永嗣(磐田)が4回ですからね。40代までやれば十分可能性があるでしょう。とにかく今回は日本のGKができることを示してほしい。彩艶ならやってくれると信じています」

(聞き手=元川悦子/サッカージャーナリスト)

▽鈴木彩艶(すずき・ざいおん) 2002年8月21日生まれ、23歳。ガーナ人の父と日本人の母を持ち、埼玉・さいたま市で育った。浦和ユース在籍中の19年2月、クラブ史上最年少となる16歳5カ月11日でプロ契約。23年8月にベルギー1部シントトロイデンに移籍。24年7月、イタリア・セリエAパルマに完全移籍。22年7月のE-1選手権で日本代表デビューを果たした。

▽工藤輝央(くどう・てるひさ) 1980年1月17日生まれ、46歳。東京都出身。中学時代は読売(現東京V)ジュニアユースに所属。昇格したユースでプレーを続け、高校卒業後は単身ブラジル留学。00年から指導者を志して広島朝鮮学園、作陽高でGKコーチ。浦和でジュニア、ユースで監督、トップでコーチを務めた。岐阜と仙台のGKコーチを経て24年7月、三菱重工浦和レッズレディースのスポーツダイレクターに就任。

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