元大関貴景勝・湊川親方〈3〉「現役時代は否定意見への反骨心、一部の応援者のために頑張っていました」
「相撲が好きで好きで打ち込めた、というのは全くなかった」
吉田 親方は現役時代、「この身長では関取は難しいんじゃないか」と言われる中を突破して関取になりましたが、それでも「この身長で幕内は、三役は、大関は……」と言われ続けていた。そうした声を聞きながら、全てはね返してるじゃないですか。反骨心というのも一つの原動力、支えだったのですか?
湊川 いや、もうそれでしかなかったですね。
吉田 それでしかなかった。
湊川 僕は相撲が好きとか、相撲が好きで好きで打ち込めた、というのは全くなかったです。ただ、自分への否定的な意見を覆して、「それでも強くなる」と言ってくれた少数の人たちのために頑張ろうという気持ちが大きかった。それが一番、励みになりました。だから、相撲自体をもっと好きになることができていたら、横綱も見えていたのでは、と今でも思います。でもやっぱり、こう好きではないんだけど、でも仕事だし、自分の夢をつかむために一生懸命だった。きついけどやらなきゃいけない、頑張らなきゃいけないという気持ちで日々自分に活を入れていた。好きなことならば努力を努力と思わず、気付けば日が経ってるみたいな。その要素があれば、僕も楽ができたかもしれませんし、心に余裕ができたかもしれない。ただ、自分が好きなものを職業にすると、うまくいかない部分、楽しくなくなる部分も絶対あると思うんです。だとしても、もうちょっと相撲を好きになれていれば、と今では思います。
吉田 逆に言えば、相撲が好きだったら反骨心が生まれなかったかもしれません。
湊川 そうなんです。だから引退して「やっぱり自分は相撲が好きだったんだな。今が楽しいな」と気付いたんです。現役時代はケガとかいろいろなことがありすぎて、好きという感覚にはなりきれなかったのかな、と。今振り返ると、好きになれればよかったなって気持ちはあるんです。やっぱり僕は相撲好きなんですよね。それに気付いたのは引退してからなんです。
=つづく
(構成=本紙編集部)
▽湊川高信(みなとがわ・たかのぶ)本名は佐藤貴信。1996年、兵庫県芦屋市出身。2014年、貴乃花部屋に入門し、同年9月場所が初土俵。16年新十両、17年新入幕。18年11月場所で初優勝を果たし、19年に大関昇進。24年9月場所中に引退。現役通算60場所で441勝254敗116休。幕内最高優勝4回、三賞7回、金星3個。最高位は大関。



















