壁一枚隔てた隣室は別世界…マンション小説特集(3)タワマンは令和の“因習村”
「ぬひんさまの塔」綿原芹著
都会のマンションでは隣に誰が住んでいるのか分からないことも珍しくない。一方で、限られた居住空間を分け合って暮らすことには変わりなく、プライバシーの境界線には集合住宅ならではの緊張感が漂う。今回は、実話をもとにしたホラーや中国の不動産事情を描く物語など、マンションが舞台の4冊を紹介する。
◇ ◇ ◇
「ぬひんさまの塔」綿原芹著
不気味な言い伝えや独自の掟が残る“因習村”が舞台となる小説では、人里離れた山奥の閉鎖的な土地が描かれるもの。しかし本作では、好立地に立つタワマンを舞台に、閉鎖性と排他性が引き起こす恐ろしい事件が描かれていく。
物語は「低層」「中層」「高層」という3章からなり、最初の主人公は30歳でビンテージタワーマンションの低層階を購入した井上清那。外資系銀行に転職を果たし、年収がアップしたことを機に憧れのタワマン生活に踏み切ったのだ。
ところが引っ越し早々、管理組合の理事を務める老人から、ベランダに挿すようにと黒い風車を渡される。さらに、マンションの庭に祭られている【ぬひんさま】に、当番制でのお参りを命じられる。最初は抵抗する清那だったが、嫌がらせとも怪異ともとれる不気味な出来事に苦しめられるようになる。
人が集まることで生まれる因習。タワマンは、令和の因習村として格好の場所かもしれない。 (KADOKAWA 2145円)


















