佐藤雫(作家)セルフケアと愛らしいペンギンに癒されて
10月×日 東京駅の丸善に行く。Suicaのペンギンとコラボしたグッズが売っていた。ペンギンが丸善の書店員さんのエプロンを着けている。かわいい。文芸書のコーナーに行くと、私の作品があった。「〇〇賞受賞!」や「続々重版!」の作家さんたちの平積みの山には到底届かない発行部数だけど、それでも、ちゃんと目に留まる場所に置いてくれていた。うれしい。大げさな表現ではなくて本当にうるっとした。店員さんに握手を求めたいくらいうれしかったけど、変な客だと思われそうだから、この感動はそっと心にしまう。
10月×日 夜、寝る前に本を開く。坂崎千春著「ペンギンとセルフケア」(すみれ書房 1760円)。そう、Suicaのペンギンの作者、イラストレーターの坂崎千春さんの本。ペンギンのイラストに、心を整えるヒントが添えてある。そうだ明日やってみよう、と思えるささやかなセルフケアと愛らしいペンギンに癒されながら、いろいろなことを思い出す。うん、大丈夫。どんなに周りがまぶしくても、一歩一歩、ゆっくりでも前に進めば、見える景色は変わっていくはずだから。
10月×日 先日の丸善で買った、馬場基著「平城京に暮らす 天平びとの泣き笑い」(吉川弘文館 1980円)を読む。奈良の都の下級官人たちの姿が、親しみやすい文体で書かれている。しばし天平の頃にタイムスリップ。木簡に残された墨書きの欠勤理由が「腹痛」。千年前も勤め人の心はそんなに変わらない。いつか平城京のお話も書きたいな。
10月×日 Suicaのペンギンは引退するらしい。寂しい。来年の今頃はもう、駅で君に会えないんだね。さかざきちはる著「ペンギンゴコロ」(文溪堂 1540円)を読む。心の中にいるペンギンは、前向きの日は白、後ろ向きの日は黒。そうだよね、ペンギンだもの。迷った時は南極点に戻ればいいんだと、ペンギンが教えてくれた。私の心の南極点、見失いそうになったら、またこの本を開こう。



















