「房子という女」富樫倫太郎著

公開日: 更新日:

■殺人鬼となった女のおぞましい半生

 累計45万部を突破した人気のSRO(警視庁広域捜査専任特別調査室)シリーズの最新作。本書では、前作で逮捕された近藤房子が、殺人鬼となるまでの自らの半生を赤裸々に告白。房子との格闘時に傷を負ったSROの山根新九郎と芝原麗子を相手に、背筋がぞっとするような房子の人生が淡々と語られる。

「殺し」の始まりは、房子が小学生のときに車にはねられて苦しんでいる犬を見て、苦しむくらいなら一息に殺してしまおうと撲殺したことから。次に仲の良かった姉が暴力的な父親が原因で自殺したことを契機に、実父の殺人に着手。その後、生き残るために邪魔な人間を次々手にかけていくが、当初正当防衛として始まった殺人が、他者の命を握っている万能感を味わうための快感殺人へと変わっていく。共犯者や被害者となった人間や自分と同じ嗜好(しこう)を持つ夫・近藤一郎との運命の出会い、自分を追いつめようとした嗅覚鋭い刑事をどうやって陥れていったかなど、容赦ない手の内が明かされていく。

 絶対に捕まらないために練られた冷酷な計画が見事。おぞましいストーリーながら、最後まで一気に読ませる。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    大谷騒動は「ウソつき水原一平におんぶに抱っこ」の自業自得…単なる元通訳の不祥事では済まされない

    大谷騒動は「ウソつき水原一平におんぶに抱っこ」の自業自得…単なる元通訳の不祥事では済まされない

  2. 2
    狙われた大谷の金銭感覚…「カネは両親が管理」「溜まっていく一方」だった無頓着ぶり

    狙われた大谷の金銭感覚…「カネは両親が管理」「溜まっていく一方」だった無頓着ぶり

  3. 3
    米国での評価は急転直下…「ユニコーン」から一夜にして「ピート・ローズ」になった背景

    米国での評価は急転直下…「ユニコーン」から一夜にして「ピート・ローズ」になった背景

  4. 4
    中学校勤務の女性支援員がオキニ生徒と“不適切な車内プレー”…自ら学校長に申告の仰天ア然

    中学校勤務の女性支援員がオキニ生徒と“不適切な車内プレー”…自ら学校長に申告の仰天ア然

  5. 5
    初場所は照ノ富士、3月場所は尊富士 勢い増す伊勢ケ浜部屋勢を支える「地盤」と「稽古」

    初場所は照ノ富士、3月場所は尊富士 勢い増す伊勢ケ浜部屋勢を支える「地盤」と「稽古」

  1. 6
    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  2. 7
    水原一平元通訳は稀代の「人たらし」だが…恩知らずで非情な一面も

    水原一平元通訳は稀代の「人たらし」だが…恩知らずで非情な一面も

  3. 8
    「チーム大谷」は機能不全だった…米メディア指摘「仰天すべき無能さ」がド正論すぎるワケ

    「チーム大谷」は機能不全だった…米メディア指摘「仰天すべき無能さ」がド正論すぎるワケ

  4. 9
    「ただの通訳」水原一平氏がたった3年で約7億円も借金してまでバクチできたワケ

    「ただの通訳」水原一平氏がたった3年で約7億円も借金してまでバクチできたワケ

  5. 10
    大谷翔平は“女子アナ妻”にしておけば…イチローや松坂大輔の“理にかなった結婚”

    大谷翔平は“女子アナ妻”にしておけば…イチローや松坂大輔の“理にかなった結婚”