初のエロチックハードボイルドを書いた椎名誠氏に聞く

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 登場人物にはほぼ名前がない。頬こけ、鼻曲げ、オリーブ……特徴で記されるが、クセモノ揃いだ。

「全員壊れた小悪人なんです。小心者なのに大胆に人を殺しちゃうとかね。キャラクター作りを楽しんでいたのかもしれない。書いてて自分でもおかしかったのは、別れた女房の家をノゾいて、壁に射精する男ね。こういう異常者いるなぁってね。ただ、おれがあまり好きじゃない、痩せて細長い、性的魅力ゼロに近い女を書いてしまったから、途中から無理やりセックスアピールをつけて。ケツが丸くて刺激的とかね。そこは苦労しました(笑い)」

 独特の湿った世界観に、本能で生きる人々。情報ソースはなんとホームレスだというから驚きだ。

「おれ、ホームレスとよく間違えられるんだよね。普段ヨレヨレの服着て、日に焼けて黒いし、髪が長いとちょうどストライクゾーンなのよ、ホームレス的に(笑い)。東京駅でも成田空港でも間違われたし、広島ではガラ出し(解体後の破片を集める作業)にスカウトされて。『アンタ体は頑丈そうだね』って。弁当込みで1日7500円だって。間違えられてちょっと悔しいときもあるけど、そのときはうれしかったな」

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