初のエロチックハードボイルドを書いた椎名誠氏に聞く

公開日: 更新日:

 空と海と太陽が似合う作家・椎名誠が、初めてエロチックハードボイルド小説を生み出した。新刊「EVENA(エベナ)」は違法薬物をめぐり、男たちが奔走するクライムノベルだ。登場人物全員悪人。ダークな世界観の中に垣間見える人間臭さはユーモラスでもある。着想の源は意外なところにあったようだ。

 今作は、著者自身も新たな試みだったという。

「過去作に多い、私小説やSFでもない。主人公のおれが何者か、場所がどこなのか、いつの時代かもわからない、非常に曖昧な世界でね。自分でも把握していない(笑い)。時間軸をクロスさせながら展開したり、一人称で他視点を描く、まあ実験です。だから書いてて楽しかったですね、自由で」

 主人公のおれは、田舎町の寂れた酒場にいる。違法薬物「エベナ」をかじり、酒で流し込む。雨の中トラックを運転中、突如飛び出してきた男を避け、多重追突事故を起こしてしまったのだ。物語はそこから始まり、予想外の方向へ転がっていく。エベナとは架空の薬物ではなく、実在するそうだ。

「チリのアタカマ高地を旅したときに聞いたんです。毒でもあり薬でもある、樹木と土を混ぜるハーブの一種で。調べたら、中毒になるとLSD系の幻覚がくるらしい。おれはやったことないから、LSD経験者に取材したんだけど、すべてが複雑に歪んで絡み合い、スピード感が常人と違って見えるんだと思う。取材しなきゃこんなバカな話書けないからね(笑い)」

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    米倉涼子“自宅ガサ入れ”報道の波紋と今後…直後にヨーロッパに渡航、帰国後はイベントを次々キャンセル

  2. 2

    「えげつないことも平気で…」“悪の帝国”ドジャースの驚愕すべき強さの秘密

  3. 3

    彬子さま三笠宮家“新当主”で…麻生太郎氏が気を揉む実妹・信子さま「母娘の断絶」と「女性宮家問題」

  4. 4

    アッと驚く自公「連立解消」…突っぱねた高市自民も離脱する斉藤公明も勝算なしの結末

  5. 5

    ヤクルト池山新監督の「意外な評判」 二軍を率いて最下位、その手腕を不安視する声が少なくないが…

  1. 6

    新型コロナワクチン接種後の健康被害の真実を探るドキュメンタリー映画「ヒポクラテスの盲点」を製作した大西隼監督に聞いた

  2. 7

    違法薬物で逮捕された元NHKアナ塚本堅一さんは、依存症予防教育アドバイザーとして再出発していた

  3. 8

    大麻所持の清水尋也、保釈後も広がる波紋…水面下で進む"芋づる式逮捕"に芸能界は戦々恐々

  4. 9

    “行間”を深読みできない人が急増中…「無言の帰宅」の意味、なぜ分からないのか

  5. 10

    万博協会も大阪府も元請けも「詐欺師」…パビリオン工事費未払い被害者が実名告発