「太陽は気を失う」乙川優三郎著

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〈私〉はひとり暮らしの母の見舞いと、幼馴染みの起則くんの墓参りのために実家に帰った。途中で会った92歳の老婆をスーパーまで送り届け、墓参りをすませた後、土手で昔の思い出などにひたっていた。すると、「いいから、早く帰ってやりなよ」と起則くんに言われた気がした。障がいがあったから、そんなにすらすらしゃべるわけがないのだが。家に着いて15分くらいしたころ、大きな地震があった。津波から逃れるために介護老人病院に避難したが、次々とけが人が運ばれてくる。あの時、土手であと15分もぼんやりしていたら……。(「太陽は気を失う」)

 人生の分岐点を描く14編の短編集。(文藝春秋 1500円+税)



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