大量絶滅カウントダウン特集!

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「6度目の大絶滅」エリザベス・コルバート著、鍛原多惠子訳

 地球上ではかつて5度も大規模絶滅が起きていた。ビッグファイブと呼ばれるこの大絶滅は、宇宙からやってきた隕石の衝突、地形が変わるほどの火山活動、地上が氷で覆われた氷河期など、地球が遭遇した自然環境の急激な変化に起因していたが、現在進行中だといわれている6度目の大絶滅は人類自身がその引き金を引いている。

 著者は、黄金カエルの異変への興味をきっかけに、アメリカマストドン、オオウミガラス、アンモナイトなど絶滅種の痕跡を検証しながら、現在絶滅危惧種となっている生き物たちの今を知るべく世界中を旅した。行く先々で目撃するのは取材中に絶滅が決定した最後の生き残りの死や、もはや実験室の中でのみ生き延びている生物の姿だ。

 現在、サンゴ類の3分の1、淡水産貝類の3分の1、サメやエイの3分の1、哺乳類の4分の1、爬虫類の5分の1、鳥類の6分の1、さらに植物の2分の1が地球から消えようとしており、毎年推定4万種のペースで絶滅が進行中だという。

 人類は世界中の地表に手を加えた。主要な河川にはくまなくダムを造り、自然環境を上回る量の窒素を出す肥料工場を造ったのも、大気の組成を変えてしまったのも、海の酸性化の原因を生みだしたのも人類だ。結果、「ほかの種を絶滅に追い込むことにより人類は自分がとまっている枝を切っている」という生態学者の言葉通りに、いよいよ絶滅リストに人類も加わるのか、あるいは英知を発揮して惨事を回避するのか、著者は結論を出していない。しかし、地球上の生物を一気に絶滅に追い込む力を持った初めての生物として、人類はいま無自覚なまま生きていることをシビアに示唆してくれる。(NHK出版 2400円+税)

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