侵略戦争の責任を裁かないニッポン人の罪

公開日: 更新日:

「1★9★3★7」辺見庸著/金曜日

 南京大虐殺のあった1937年に自分がその場にいたら、果たして中国人を殺さずにいられたかという問いを自らに突きつけ、記憶の墓をあばく試みに挑んだ辺見は、「過去がげんざいに追いつき、げんざいを追いこし始めたのだな」と書く。

 戦争に行って、あの人は変わったと妻に言われた父親にも辺見は問いかけ、ある時、酔った父が「朝鮮人はダメだ。あいつらは手でぶんなぐってもダメだ。スリッパで殴らないとダメなんだ……」と言ったのを思い出す。そして、こう述懐する。

「生前の父は戦争の景色について多くを語らなかったけれど、なんにせよ戦争の生き証人ではあった。父にはひとつのからだに同居してはならないもの、共存できないとされているものが、はしなくも同居していた」

 しかし、辺見の父親のようには「変わらなかった」者もいる。たとえば昭和天皇であり、満州国を「自分の作品」と言った岸信介である。しかも、彼らはそのまま戦後を生き、岸は復権して首相にまでなった。

「侵略戦争の最高責任者を、ニッポンという国のひとびとはけっしてみずから責問し、みずからの手で裁こうとはしなかった。なぜなのか。おかしい。実に奇妙である。社会学的にも、歴史心理学的見地からも精神病理学的にもおかしい」

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    紳助暴行事件 衝撃の一部始終(2)

  2. 2

    紳助暴行事件 衝撃の一部始終(1)

  3. 3

    2度目の離婚に踏み切った吉川ひなの壮絶半生…最初の夫IZAMとは"ままごと婚"と揶揄され「宗教2世」も告白

  4. 4

    2026年は米価が値頃になるのか? 昨年末には最高値更新も業界には先安感漂う

  5. 5

    「日吉湯」は大満足のスーパー銭湯風銭湯 15台分の駐車場も完備

  1. 6

    紳助暴行事件 衝撃の一部始終(3)

  2. 7

    NHK大河ドラマ「豊臣兄弟!」への“期待と不安”…第1話を見た時代劇研究家が語る

  3. 8

    “脇役中の脇役”仲野太賀に秀吉を補佐する弟・秀長はまさにハマリ役 NHK大河「豊臣兄弟!」スタート

  4. 9

    青学大・原晋監督も警戒! 早大総長の「2億円の置き土産」は来年開花するか

  5. 10

    矢沢永吉と郷ひろみ…NHK紅白で浮き彫りになった“待遇格差”の現実 視聴率35%回復も問題山積