ストーカーがエスカレートし信頼と愛情を考えさせられる一冊

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「ウォーク・イン・クローゼット」綿矢りさ著 講談社 2015年10月

 本書には、「いなか、の、すとーかー」と「ウォーク・イン・クローゼット」の2作が収録されている。いずれも深い人間洞察に裏付けられた面白い作品だ。

「いなか、の、すとーか」の主人公・石居透は、新進気鋭の陶芸家だ。強い上昇志向を持っているが、それを隠す知恵もある。東京の大学で陶芸を学んだが、そこそこ名が知れるようになると、あえて故郷の小椚にもどって実家の近くに工房を造った。テレビ番組で石居の生き方が肯定的に紹介される。周囲から嫉妬を受けるが、それをかわす知恵はついている。ただし、問題は中年女性のストーカーの砂原だ。ある日、工房に戻ると砂原がろくろを回していた。

〈「この前のテレビ越しに私にくださったメッセージの、真意を教えてくださいませんか」/淡々と冷静そうでいながら、おかしな内容を早口でしゃべる女、たしかに覚えがある。ああ、田舎に帰ってから、こいつの被害が止んでいたのに。〉

 評者もこのタイプのストーカー的な読者に煩わされたことがあるので、この行を読んだときに背筋が寒くなった。

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