侵略戦争の責任を裁かないニッポン人の罪

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 こう嘆く辺見は「もの食う人びと」で紀行文学大賞を受けた時、選考委員で辺見の受賞に強く反対した阿川弘之から、元慰安婦のことを書いた最終章はつまらない、と罵倒されたという。

 先日亡くなった阿川は文化勲章受章者だった。元慰安婦たちに、死にたきゃ死ねよ、と言えるような阿川に勲章と終身年金を与える国だと、辺見はニッポンを指弾する。

 よく、「いつまで謝罪させられるのか」と言った声が若い人たちからも聞かれるが、A級の戦争犯罪を問われた岸が、それを免れ、ついに首相になったことが、すなわち、謝罪していないということなのである。形だけ謝ったふりをしていることは、岸の孫の安倍晋三が、「国策を誤り」という文言を入れて真摯に謝罪した「村山談話」を受け継ぎたくないと主張したことでも明らかだろう。岸が首相にならなければ、孫の安倍が首相になることもなかった。それをゆるしてしまったニッポン人の罪も、この本は鋭く問うている。★★★(選者・佐高信)

【連載】週末オススメ本ミシュラン

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