読む人を物語世界に誘う長編小説特集

公開日: 更新日:

「冬の光」篠田節子著

 四国遍路に行っていた父が、帰りのフェリーで自殺した。父は結婚後も、学生時代に同級生だった研究者・笹岡紘子と関係を続け、母との人間関係は崩壊していた。母と姉に責められて、紘子とは別れたはずだったが、死後に届いた紘子の勤務先の女子大からの通知で、父の裏切りが発覚した。紘子は東日本大震災で死亡していた。父が東北にボランティアに行っていたのは紘子のためだったのか。次女の碧は、父が遺したビジネスダイアリーのメモを見て父の遍路の旅をたどり、父が女連れだったことを知ってショックを受ける。だが、父は逆風に身をさらすような生き方をした紘子を愛し続けていたのだった。

 娘の目に映った父の不実と、父の真実との乖離が胸を打つ。(文藝春秋 1650円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ドジャース佐々木朗希の心の瑕疵…大谷翔平が警鐘「安全に、安全にいってたら伸びるものも伸びない」

  2. 2

    ドジャース「佐々木朗希放出」に現実味…2年連続サイ・ヤング賞左腕スクーバル獲得のトレード要員へ

  3. 3

    ドジャース大谷翔平32歳「今がピーク説」の不穏…来季以降は一気に下降線をたどる可能性も

  4. 4

    ギャラから解析する“TOKIOの絆” 国分太一コンプラ違反疑惑に松岡昌宏も城島茂も「共闘」

  5. 5

    巨人が李承燁コーチ就任を発表も…OBが「チグハグ」とクビを傾げるFA松本剛獲得の矛盾

  1. 6

    国分太一問題で日テレの「城島&松岡に謝罪」に関係者が抱いた“違和感”

  2. 7

    今度は横山裕が全治2カ月のケガ…元TOKIO松岡昌宏も指摘「テレビ局こそコンプラ違反の温床」という闇の深度

  3. 8

    国分太一“追放”騒動…日テレが一転して平謝りのウラを読む

  4. 9

    ドジャース首脳陣がシビアに評価する「大谷翔平の限界」…WBCから投打フル回転だと“ガス欠”確実

  5. 10

    大谷翔平のWBC二刀流実現は絶望的か…侍J首脳陣が恐れる過保護なドジャースからの「ホットライン」