著者のコラム一覧
三島邦弘

ミシマ社代表。1975年、京都生まれ。2006年10月単身、ミシマ社設立。「原点回帰」を掲げ、一冊入魂の出版活動を京都と自由が丘の2拠点で展開。昨年10月に初の市販雑誌「ちゃぶ台」を刊行。現在の住まいは京都。

私の心は「いっきに」天空へ飛んだ

公開日: 更新日:

「人間が異常な事件に遭遇したときに、いつも感じるのは、月や星が冷厳なことである。私も娘が亡くなった前夜、四方空襲の火の空で、いつもと変りなく瞬いている星に強い憤りを感じた」

 が、それから半年ほど経ったときカロッサの言葉を思い出し、引用する。

 ――われわれの喜び、われわれの嘆きを星は永久に聞きとりはしない。しかし、星々の輝きは、われわれが喜び、嘆きに堪え得るよう、いつも優しい調子を保っていてくれる――。

 本書は、平凡社から先ごろ創刊されたスタンダードブックスというシリーズの一冊である。寺田寅彦、岡潔、そして野尻の3人の科学読み物が、一作家一冊で編集されている。新書サイズながら上製本。その凛とした小さなたたずまいに、星に不案内だった私も手を伸ばさないではいられなかった。

 そうして開いた星々の集まりは、忘れかけていた感覚を私に思い出させた。名著はときに、読書を悠久に誘う。事実、私はこの200ページちょっとの一冊を2週間かけて少しずつ読んだ。と同時に、既述の通り、私の視野は時空を超えたところに運ばれた。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人・田中将大はヤンキースに未練タラタラ…「一途な200勝男」は復帰願望を周囲にこぼしていた

  2. 2

    阪神・才木浩人はドジャース入りで大谷と共闘の現実味…「佐々木朗希より上」の評価まで

  3. 3

    カムバック星野監督の“2カ月20kg”の無茶ぶりに「嫌です」なんて言えるはずもなく…

  4. 4

    今オフ日本史上最多5人がメジャー挑戦!阪神才木は“藤川監督が後押し”、西武Wエースにヤクルト村上、巨人岡本まで

  5. 5

    高市早苗氏は頼みの党員・党友支持に急ブレーキで決戦シナリオ破綻…陣営が迫られる「地獄の選択」

  1. 6

    不世出のストライカー釜本邦茂さんが草葉の陰から鹿島18歳FWの「代表入り」をアドバイス

  2. 7

    国民民主党“激ヤバ”都議に「免許不携帯」疑惑 日刊ゲンダイの直撃にブチ切れ!【動画あり】

  3. 8

    ヤクルト村上宗隆の「メジャー契約金」は何億円?

  4. 9

    そうだ、風邪をひけばいいんだ!減量に行き詰まった末、裸同然で極寒の庭へ飛び出した

  5. 10

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇