「国宝消滅」デービッド・アトキンソン著

公開日: 更新日:

観光ビジネスの強化こそ日本経済の進むべき道

 著者はゴールドマン・サックス証券時代に日本の不良債権の実態を暴き注目を集めた金融アナリスト。茶道など日本の伝統文化にも造詣が深く、現在は創立300年を超す国宝・重要文化財の補修を手がける小西美術工藝社の社長を務める。

 前著「新・観光立国論」で、人口減少によって労働人口や国内市場が縮小している日本経済にとって観光ビジネスの強化こそ進むべき道だと提言、そのための問題点と可能性を鋭く指摘した。本書はその続編ともいうべきもの。

 本書の要点は以下の通り。観光立国実現のために既存の文化財を観光資源として整備・活用すること。文化財を維持する財源を国の補助金偏重から観光客からの収入へと転換すること。文化財の利用を拡大することによって伝統技術の継承を促すこと。これらはすべて実証的なデータをもとにしており、現状の文化行政、職人意識の問題点を鋭く突いている。

 最近、情緒的な日本礼賛論が目につくが、本書のような辛口の日本文化に対する視線こそが、日本の真の魅力をアピールするためには必要だろう。(東洋経済新報社 1500円+税)



【連載】ベストセラー早読み

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ドジャース佐々木朗希に向けられる“疑いの目”…逃げ癖ついたロッテ時代はチーム内で信頼されず

  2. 2

    ドジャース佐々木朗希の離脱は「オオカミ少年」の自業自得…ロッテ時代から繰り返した悪癖のツケ

  3. 3

    備蓄米報道でも連日登場…スーパー「アキダイ」はなぜテレビ局から重宝される?

  4. 4

    上白石萌音・萌歌姉妹が鹿児島から上京して高校受験した実践学園の偏差値 大学はそれぞれ別へ

  5. 5

    “名門小学校”から渋幕に進んだ秀才・田中圭が東大受験をしなかったワケ 教育熱心な母の影響

  1. 6

    大阪万博“唯一の目玉”水上ショーもはや再開不能…レジオネラ菌が指針値の20倍から約50倍に!

  2. 7

    今秋ドラフト候補が女子中学生への性犯罪容疑で逮捕…プロ、アマ球界への小さくない波紋

  3. 8

    星野源「ガッキーとの夜の幸せタイム」告白で注目される“デマ騒動”&体調不良説との「因果関係」

  4. 9

    女子学院から東大文Ⅲに進んだ膳場貴子が“進振り”で医学部を目指したナゾ

  5. 10

    “貧弱”佐々木朗希は今季絶望まである…右肩痛は原因不明でお手上げ、引退に追い込まれるケースも