「ガラパゴス」(上・下) 相場英雄著

公開日: 更新日:

 警視庁捜査1課継続捜査担当の田川信一は、ある日、身元不明者のリストの中に不自然な写真を発見する。それは、練炭自殺として処理された青年の死体。

 その男の口元には青酸カリによって死亡したことを示す鮮やかな紅色が現れていた。捜査を始めた田川は、現場となった老朽化した団地の風呂場で、「新城」という文字と6ケタの数字が書かれた紙切れを拾う。

 紙切れを手がかりに不可能かと思われた被害者の身元を突き止めた田川は、被害者が非正規雇用の派遣労働者として各地で働いていたことを知る。彼はなぜ殺されなければならなかったのか、その真相を探るうちに、田川は思いがけず日本社会のおぞましい労働現場と世界から取り残された国内産業の惨憺たる現実に直面する……。

 本書は、28万部超えのヒットとなった「震える牛」の続編。「震える牛」にも登場した窓際刑事の田川警部補が、地道な捜査で事件の真相を追いながら、日本独自の進化を遂げたハイブリッドカーや液晶テレビなどの業界の袋小路ぶりや、人材派遣会社の欺瞞に気づく。

 ガラパゴス化した今の日本社会をあぶりだす問題作だ。(小学館 上・1400円+税 下・1500円+税)





【連載】ベストセラー早読み

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    元横綱・三重ノ海剛司さんは邸宅で毎日のんびりの日々 今の時代の「弟子を育てる」難しさも語る

  2. 2

    矢沢永吉&甲斐よしひろ“70代レジェンド”に東京の夜が熱狂!鈴木京香もうっとりの裏で「残る不安」

  3. 3

    巨人・岡本和真を直撃「メジャー挑戦組が“辞退”する中、侍J強化試合になぜ出場?」

  4. 4

    “最強の新弟子”旭富士に歴代最速スピード出世の期待…「関取までは無敗で行ける」の見立てまで

  5. 5

    “文春砲”で不倫バレ柳裕也の中日残留に飛び交う憶測…巨人はソフトB有原まで逃しFA戦線いきなり2敗

  1. 6

    【独自】自維連立のキーマン 遠藤敬首相補佐官に企業からの違法な寄付疑惑浮上

  2. 7

    物価高放置のバラマキ経済対策に「消費不況の恐れ」と専門家警鐘…「高すぎてコメ買えない」が暗示するもの

  3. 8

    福島市長選で与野党相乗り現職が大差で落選…「既成政党NO」の地殻変動なのか

  4. 9

    Snow Manライブで"全裸"ファンの怪情報も…他グループにも出没する下着や水着"珍客"は犯罪じゃないの?

  5. 10

    今の渋野日向子にはゴルフを遮断し、クラブを持たない休息が必要です