子どもの存在で「老後破産」のリスクが高まる時代に

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「年をとっても家族がいれば大丈夫」。これまで、多くの日本人が老後の安心は家族と共にあると信じて疑わなかった。しかし、NHKスペシャル取材班著「老後親子破産」(講談社 1300円+税)には、家族、とりわけ子どもの存在が、老後のリスクにすらなる時代の到来が克明にルポされている。

 札幌市厚別区では、厚生労働省のモデル事業として2014年から高齢者の相談窓口を設置している。その相談件数を分析してみると、半数を超えるのが「30~50代の子世代について」で、内容は「正社員の仕事がない」「収入が安定しない」など、子世代の将来を不安視するものが最多だったという。

 本書では、実際の世帯にも取材を敢行している。80歳の安田義昭さんは45歳の息子と同居。同居のきっかけは、義昭さんの脳梗塞と、息子の失業が重なったこと。父親の介護をしながら日雇い仕事をする息子の収入は安定せず、日給7500円の仕事も毎日あるわけではない。

 生活費のほとんどは義昭さんの年金収入だが、家賃や光熱費、保険料を支払うと月4万円ほどしか残らない。義昭さんには高血圧などの持病もあり、独居の頃は生活保護も受けていた。しかし“働ける息子との同居”で、保護は打ち切られてしまったという。

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