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恐ろしいが、ちょっと安心するクライマックス

「アカガミ」窪美澄著/河出書房新社 2016年4月

 2030年の日本では、少子化が著しく進行している。それだけでなく、自殺者が爆発的に増えている。それは、ある生物学者が2020年に、〈二〇〇〇年以降に生まれた若者の寿命は四十歳までもたないかもしれない〉という論文を発表したからだ。

 この論文の内容はアカデミズムでは反駁されたが、ネット上では影響を持ち続け、精神に変調を来す人、自殺者が続出した。そのような中で、人々はセックスに関する関心を失う。このままだと少子化で日本が滅びてしまうことに危機を抱いた政府は「アカガミ」と呼ばれる制度を導入する。アカガミは、出産可能なカップリングを政府が行う。住宅だけでなく、栄養素のバランスが良く取れた食事も配給される。子どもをつくろうとするカップルだけでなく、その親の生活や介護も政府が責任を持つ。まさに至れり、尽くせりの制度のように見える。インターネットで検索しても、アカガミについての否定的なコメントはまったく見あたらない。

 25歳のミツキは、ログという女性の紹介でアカガミに志願する。ログは国家公務員で、高級官僚やIT産業で働くエリートの「性を抜く」仕事をしている。〈精子を体の外に放出するのを私が手伝うの。私の体を使って。私はある種のストレスが限界に達した人たちの性を、短時間で効率的に処理することができる〉とログは説明する。ミツキは、アカガミに志願したことによって、よきパートナーと出会い、妊娠する。当初、政府によってあてがわれた住宅は東京郊外だったが、妊娠すると都心部の豪華な施設に移動になる。

 しかし、奇妙だ。何故に政府は、これほど熱心に子どもを産むことを支援するのだろうか。アカガミの背後には大きな謎があるようだ。インターネット空間にアカガミに関する否定的なコメントがまったくないのも、政府が消去しているかららしい。ログもアカガミの真相を知っていればミツキに勧めなかったと告白する。

 ついにミツキは出産するが、その後、思いがけないことが起きる。恐ろしいが、それでいてちょっと安心するようなクライマックスが読者を楽しませてくれる。★★★(選者・佐藤優)

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