東映の無頼な作風を醸成させたのは超インテリ

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「ひどらんげあおたくさ」高田宏治著

 著者は日本映画界を代表する脚本家であり、「極道の妻たち」「鬼龍院花子の生涯」「野性の証明」「仁義なき戦い 完結篇」「北陸代理戦争」といった名作を量産してきたヒットメーカーである。

 1934年生まれ、今年82歳の大ベテランによる初の書き下ろし長編小説だ。

 ドイツ人医師シーボルト、世界的探検家・間宮林蔵、シーボルトと恋に落ちた日本人女性・瀧といった実在の人物たちが登場、ひっそりと咲いたシーボルトと瀧の悲恋が描かれている。

〈「シーボルト様。これから、何とお呼びすればいいのですか」

「何デモ。ワタクシハ、オタクサ、愛シノヒトト呼ブ」〉
“オタクサ”とは“お瀧さん”と呼ばれた瀧をさす。外国人らしく愛する女性の名を、日本で見つけたアジサイ(ヒドランゲア)の学名につけた。

 シーボルトが帰国する際に進呈された日本地図をめぐり大騒動が勃発する。当時は厳しい鎖国政策がとられていた時代ゆえに、日本地図は国外に持ち出すことは厳禁であった。

 著者は本書に登場する人物に宛てた手紙に触発され、執筆したという。

 高田宏治というと、バイオレンス&アウトローの印象が強いが、実は女性を描くことに並々ならぬ力量を発揮する。

 シーボルトが30年ぶりに来日した際、瀧に会いたいと、瀧とシーボルトとの間に生まれた伊禰(日本人女性初の産科医)に訴えるのだが、瀧は会おうとしない。伊禰の一言が哀しい。

〈「母は、そういう人なのです」〉

 東映バイオレンス&アウトロー路線を牽引した脚本家高田宏治、「大奥マル秘物語」「日本の首領」の中島貞夫監督、映画界の首領と呼ばれた東映会長岡田茂。3者に共通するのは東大卒! 意外なことだが、東映の無頼な作風は超インテリが醸成させたのだった。(アスペクト 1900円+税)

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