ラブホテルでしか肉交できない男女の群像劇

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「愛の宿」花房観音著 文藝春秋 1500円+税

「いま一番勢いがある作家です」(「特選小説」畠山健一編集長)と言わしめる花房観音の連作短編集は、京都・寺町通りにある架空のラブホテル「ホテルシャトゥ」を舞台にした6つの物語だ。

 土曜の夜、ラブホテルに宿泊した男女4組。翌日曜朝8時、先に出た男性客からの電話によって、30歳くらいの身元不明の女性が死体で発見される。宿泊客はアリバイ捜査のために夕方7時まで足止めをくらう。

 みんな訳ありのカップルばかりだ。12年間不倫が継続中の37歳独身女性と49歳元上司。19歳の処女とコンビニのアルバイトの先輩。高校の同窓会で再会した44歳の人妻と同級生。一度も素人女性と体を重ねたことのない34歳アルバイト男性と出会い系サイトで知り合った自称女子大生、29歳アルバイト女性。

〈もし、あの夜、あのホテルに泊まらなければ――どうなっていたでしょうね。〉

 足止めの半日間が男女関係に変化をもたらす。“愛”という名前がついているのに、愛のないホテルで4組の男女はいかに肉交したのか。男女の群像劇と個人的人間関係が同時に4つの物語になって進行し、私を引き込む。

 現実のラブホテル利用客の大半も、自分の部屋で肉交できない事情を抱えた男女である。痴情のもつれ、売春トラブル、ドラッグ等々で多くのラブホテルは死者が出ている。以前歌舞伎町のラブホテルで、硫化水素自殺したカップルが最期に使った部屋を潜入取材したことがあった。心中した男女は冥土の土産なのか、ジャグジー風呂と天窓から陽光が降り注ぐ一番豪華な部屋に泊まっていた。

 連作物の醍醐味は、いかに各作品が独立しながら、必然的につながっているかにある。その成功例が本書だろう。

 残り2つの物語は、ラブホテル女性経営者の半生と、もうひとつ……背筋の凍るどんでん返しが待っている。

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