「からゆきさん」森崎和江著
「からゆきさん」とは、九州の西部・北部で使われていた、海外への出稼ぎや、その人々を呼んだ言葉だったが、次第に海の向こうに売られた女たちを意味するようになった。そんな彼女たちの足跡を記録した傑作ノンフィクションの復刻。
著者がからゆきさんの存在を知ったのは友人の養母・キミとの出会いだった。
明治29年に天草の牛深(うしぶか)で生まれたキミは、5、6歳のころ「因業小屋」と呼ばれた見せ物の興行主に養女に出され、16歳の時にからゆきとして朝鮮に売られた。その時、一緒になった最年少の少女はまだ12歳だったという。斡旋業者に連れられ海を渡る彼女たちの多くは密航だった。異国に渡った少女たちのその後も綿密に取材しながら、知られざる日本の裏面史をあぶりだす。(朝日新聞出版 620円+税)