日本独自のナイト文化「スナックブーム」の仕掛け人・五十嵐真由子インタビュー

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 全国1400店以上のスナックを訪ね、ママを中心に広がる空間の魅力に取りつかれた。コロナ禍には常連客とママをつなぐ「オンラインスナック」を開設し、「存亡の機」を乗り切った。ママは人と人、地域社会をとりもつ「ハブ」のような存在だという。「スナック女子(スナ女®)」という言葉を生み出し、全世界にスナック文化の素晴らしさを発信。AI時代だからこそ、人間同士の心の通った交流が求められている。スナックをこよなく愛する仕掛け人に話を聞いた。

  ◇  ◇  ◇

■コロナ禍でオンライン飲み会

 ──スナックにハマったきっかけは何ですか。

 15年ほど前、勤めていた楽天トラベルのPR活動で岐阜県の下呂温泉を訪れた時のことです。営業先のホテルの社長は堅物と聞いていて、気が重くて。前日入りした際、地元のタクシーの運転手さんに「どういうふうに話したらいいんですかね」ってたずねたんです。そしたら、「姉ちゃん、スナックに行かなきゃダメだよ」と言われて。行きたくなかったんですが、「いいママ紹介してやるから、とにかく午後7時に行け」と言われ、仕方なく訪問しました。

 ──人生初スナックだったそうですね。

 板チョコみたいな扉があって中が見えない。ドアを開けるのにも勇気がいる。「何時に行く」とも伝えていなかったのに、ママが店の外に立っていて、「待ってたわよ」って。運転手さんが連絡してくれていたんです。入ってみたら店内は真っ暗で奥の方から白いたばこの煙がモクモク上がり、奥の席でおっちゃんたちがガハハと笑ってる。嫌だな、30分で帰ろうって思っていたら、ママが「あちらは町会の会長さん、PTAの会長さん、青年部会の会長さん、みんなあなたのために集まってくれたのよ」って。「明日行く旅館のオーナーのおしめを替えてやったんだ。俺の名前出せば大丈夫だよ」と、アドバイスしてくれて。ママの一声で地元の皆さんが集まってくれ、すっかり盛り上がり、深夜1時まで飲んで最後は「万歳三唱」で見送ってもらったんです。

■地方活性化のカギを握る

 ──スナックならではの出会いですね。

 翌朝、朝ごはんも食べずに急いでチェックアウトしたら、ホテルの前にママがいたんです。「遅くまで飲んだし、疲れてるから朝ごはんを食べていないでしょう。ダメよ」って紙袋を渡され、中を見たら手づくりのおにぎりが3つ入っていました。「1つ目は私の力こぶ。2つ目は昨日の常連さんたちの力こぶ。最後はあなた自身の力こぶを握ったから、これを食べてから行きなさい」と言われ、背中をポンと押してもらい、涙がボロボロ出ました。ホテルに行ったらオーナーが待ち構えてて、「昨日、店に行ったんだって。ママは俺のこと何か言ってた?」って聞くんです。「もう町中の重鎮がみんなママで回っているじゃん」って思いました。

 ──ママの存在は特別なのですね。

 ママの力でもあるんですけど、スナックを誤解してた部分があると分かって。それから毎回、前入りしてスナックの扉を勇気を持って開けられるようになりました。常連さんの話を聞くと、街が見えてくるんです。観光ガイドには載っていない、その街が。人と人とのつながりを生み出す魔法の言葉が、詰まっています。そこでの会話がスナックの醍醐味です。

 ──ますます好きになった。

 1年後、ママにお礼を伝えようと再訪したら、その店は閉店となっていて、大事な場所を失った。そんなことが続き、ママたちに話を聞いたら当時は9割が男性客で、どの店もオープンな形でお客さんを呼んでいなかった。「もう終わっていくのよね」って諦めモードでした。むしろ女性も楽しめる場ですし、もっと発信すれば入りやすくなると思い、2017年に「スナ女®」という言葉を作って商標登録を取りました。

 ──コロナの前ですね。

 コロナ禍になった時に、全国のママから「密なところでウイルスが蔓延すると言われてもう営業ができない」とSOSが届きました。「常連さんとだけでもいいからお話しする場が欲しいのよ」と相談され、プラットフォーム「オンラインスナック」を作りました。その後、スナックに対して「怖い」「いくら取られるか分からない」「店で何をしゃべればいいの」といった初歩的な理由で躊躇する人向けに初心者ツアーをサービス化しました。今では、コンシューマー(消費者)だけでなく、ひとつのカルチャーとして活性化させたら企業も一緒に潤うと確信して、酒類や菓子メーカー、地方自治体、交通機関とタッグを組んでやっています。

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