アメリカ社会に激震 米大統領で本当に負けたのは誰か?

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■保守の敗北

 次に保守の敗北については中山俊宏著「アメリカン・イデオロギー」(勁草書房 2800円+税)で分析しています。今回の選挙報道でテレビにもよく出ていた中堅の政治学者が3年前に出した論集ですが、ケネディ時代に頂点を極めたリベラルに対抗して成長した保守主義運動が、ブッシュ時代のあと一転して分裂するさまを描いています。この「分極化」現象をさらに長い歴史軸で分析した西川賢著「分極化するアメリカとその起源」(千倉書房 4000円+税)と併読すると、保守陣営の行き詰まりの構造がよくわかります。

 他方、分極化現象を「反動」という視点でとらえるのが会田弘継著「トランプ現象とアメリカ保守思想」(左右社 1800円+税)。著者は元共同通信論説委員長のベテランで、階級社会のヨーロッパで継承される保守主義とは違うアメリカ型の保守主義が、宗教的な回心への強烈な衝動を内に抱えながら「南北戦争以前の記憶を秘めた、公民権法以前のアメリカ」に回帰しようとしたところに「トランプ現象」が生まれた、と解いてゆく。その意味でトランプは実体というより「象徴」なんですね。

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