「私の『貧乏物語』」岩波書店編集部編

公開日: 更新日:

 かつては米屋で米や麦を買うのに米穀通帳というものが必要だったが、出久根達郎の家には米穀通帳がなかった。極貧の生活で米を買ったことがなかったからだ。乾麺を一束買い、3倍にふやかして食べる。それが主食だった。それ以外は道端のツクシ、池のザリガニ、稲田のイナゴを捕って食べた。自分たちの食事と比べるようなものを食べたことがなかったので、粗食だとは思わなかった。イナゴの佃煮が珍味として高価で売られているのを見つけたとき、自分たちはぜいたくをしていたのかもしれないと思った。

 ほかに、近所の家のケチャップを混ぜただけのチキンライスが羨ましかった蛭子能収など、ほのぼのしてしまう36編の貧乏物語。(岩波書店 1600円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ヤクルト村上宗隆と巨人岡本和真 メジャーはどちらを高く評価する? 識者、米スカウトが占う「リアルな数字」

  2. 2

    大山悠輔が“巨人を蹴った”本当の理由…東京で新居探し説、阪神に抱くトラウマ、条件格差があっても残留のまさか

  3. 3

    中山美穂さんの死を悼む声続々…ワインをこよなく愛し培われた“酒人脈” 隣席パーティーに“飛び入り参加”も

  4. 4

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇

  5. 5

    大谷翔平の28年ロス五輪出場が困難な「3つの理由」 選手会専務理事と直接会談も“武器”にならず

  1. 6

    陰で糸引く「黒幕」に佐々木朗希が壊される…育成段階でのメジャー挑戦が招く破滅的結末

  2. 7

    豊作だった秋ドラマ!「続編」を期待したい6作 「ザ・トラベルナース」はドクターXに続く看板になる

  3. 8

    巨人・岡本和真の意中は名門ヤンキース…来オフのメジャー挑戦へ「1年残留代」込みの年俸大幅増

  4. 9

    悠仁さまは東大農学部第1次選考合格者の中にいるのか? 筑波大を受験した様子は確認されず…

  5. 10

    中山美穂さんが「愛し愛された」理由…和田アキ子、田原俊彦、芸能リポーターら数々証言