「三鬼 三島屋変調百物語四之続」宮部みゆき著

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 物語の舞台は、江戸は神田の一角にある袋物屋。主人の伊兵衛とおかみのお民の夫婦が営む名店だが、店の客間「黒白の間」では、一度に一人の語り手を招き入れ、伊兵衛の姪のおちかという娘が1対1でただ話を聞くという趣向が行われていた。粋人たちの間で話題となり、誰かに吐き出してしまいたい不思議な話や恐ろしい話を持った客人が次々とやってくる。聞き手はこの場でただ聞いて聞き捨て、語り手は語って語り捨てるという簡単な決まりのもとに、墓場までひとりでは抱えきれない物語を持った人々が黒白の間を訪れる。本書は、そんな黒白の間での話をつづった三島屋シリーズの最新刊だ。

 収録されているのは、13歳の女の子が村祭り中止の顛末を語る「迷いの旅籠」、弁当屋がある峠で経験した奇異な出来事「食客ひだる神」、ある復讐を果たした武士が処罰として送られることになった村で出会った鬼の話「三鬼」、娘時代の心のまま年老いた老婆の物語「おくらさま」の4話。密かに語られる物語の中に見えてくる人間という生き物の業が、なんとも切なく、愛おしく思えてくる。(日本経済新聞出版社 1800円+税)

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