「カズサビーチ」山本一力著

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 ペリー来航の8年前に、浦賀に入港を試みた米国の船があった。その名もマンハッタン号。クーパー船長が率いるその船は、マッコウクジラを追って日本近海を航行している途中、嵐に遭って漂流していた日本人水夫22人を発見して救助したのだ。

 船乗りとしては当然の救助活動だったが、大人数の水夫が加わったことで、船内はいきなり食料難に陥る。早く彼らを日本に送り届けようとするものの、鎖国政策がとられている日本の港に近づくということは被弾する危険性がある上に、激しい黒潮の流れに阻まれてしまう可能性も高かった。言葉も通じず、文化も異なる2つの国の境で、マンハッタン号は果たして無事に水夫を送り届けることができるのか……。

 本書は、日本とアメリカの初遭遇の史実を基に描かれた歴史小説。日本が開国するきっかけとなるペリー来航の布石となった史実が面白い。日米双方が異文化を前にして手探りで命のやりとりをする状況が、スリリングに描かれている。(新潮社 1600円+税)

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