「人生の短さについて」セネカ著、中澤務訳
著者は古代ローマ時代の哲学者。あの皇帝ネロの教育係、そして補佐役も務めたが、謀反の嫌疑をかけられ自殺を命じられた。その人と思想にふれる入門書。
表題作は、当時、ローマ帝国の食糧管理官だった義父パウリヌスにあててつづられた一文。生きられる期間はとても短く、しかも、与えられた時間はすばやく過ぎ去っていくと人々は嘆くが、それはわれわれが時間の浪費をしているからにほかならないと説き、多忙な職にある義父に、職から身を引きのどかな生活を送るよう勧める。
親友に仕事や友人の選び方、運命への対処法などを説いた「心の安定について」、追放され流刑地で暮らす息子を心配する母への手紙「母ヘルウィアへのなぐさめ」の2編も収録。
(光文社 900円+税)