【難民問題】 欧州をはじめ世界を揺るがす難民問題に迫る

公開日: 更新日:

「あやつられる難民」米川正子著

 南アの大学に学んだあと、国連ボランティアとして世界の紛争地等で働いた著者。その後、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の職員としてルワンダ、ケニア、コンゴ民主共和国で難民の保護・支援や政策立案に関わった。つまり筋金入りの現場人だ。本書は難民問題に関する入門書だが、著者自身の体験や反省もしばしば語られる。

 たとえばUNHCRは難民支援のためにすぐにキャンプを立ち上げようとするが、本当に正しい対応なのか。キャンプは収容所だが、国際支援のパンフレット類には、まるでリゾートホテルの紹介のような文言や写真が並んで誤解をかきたてる。さらに国連やNGO団体の職員には難民に「上から目線」でしか応対しない者や国際機関における自分のキャリアのために難民を利用する者もいるという。

 自身が内部に身を置いた著者であり、過去の仕事に対しても自己批判を絶やさない。「私は国際社会が大嫌いだ」と書いた元難民もいる現実。「かわいそう」と表面的な同情だけではすまない過酷な世界の現実を見据えるのに役立つ。著者は現在、立教大学特任准教授として若い世代の指導に当たる。(筑摩書房 940円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    小室圭さん年収4000万円でも“新しい愛の巣”は40平米…眞子さんキャリア断念で暇もて余し?

    小室圭さん年収4000万円でも“新しい愛の巣”は40平米…眞子さんキャリア断念で暇もて余し?

  2. 2
    メジャー29球団がドジャースに怒り心頭! 佐々木朗希はそれでも大谷&由伸の後を追うのか

    メジャー29球団がドジャースに怒り心頭! 佐々木朗希はそれでも大谷&由伸の後を追うのか

  3. 3
    若い世代にも人気の昭和レトロ菓子が100均に続々! 製造終了のチェルシーもまだある

    若い世代にも人気の昭和レトロ菓子が100均に続々! 製造終了のチェルシーもまだある

  4. 4
    巨人にとって“フラれた”ことはプラスでも…補強連敗で突きつけられた深刻問題

    巨人にとって“フラれた”ことはプラスでも…補強連敗で突きつけられた深刻問題

  5. 5
    長渕剛の大炎上を検証して感じたこと…言葉の選択ひとつで伝わり方も印象も変わる

    長渕剛の大炎上を検証して感じたこと…言葉の選択ひとつで伝わり方も印象も変わる

  1. 6
    「天皇になられる方。誰かが注意しないと…」の声も出る悠仁さまの近況

    「天皇になられる方。誰かが注意しないと…」の声も出る悠仁さまの近況

  2. 7
    「監督手形」が後押しか…巨人入り目前から急転、元サヤに収まった真相と今後

    「監督手形」が後押しか…巨人入り目前から急転、元サヤに収まった真相と今後

  3. 8
    東京15区補選は初日から大炎上! 小池・乙武陣営を「つばさの党」新人陣営が大音量演説でヤジる異常事態

    東京15区補選は初日から大炎上! 小池・乙武陣営を「つばさの党」新人陣営が大音量演説でヤジる異常事態

  4. 9
    高島彩、加藤綾子ら“めざまし組”が大躍進! フジテレビ「最強女子アナ」の条件

    高島彩、加藤綾子ら“めざまし組”が大躍進! フジテレビ「最強女子アナ」の条件

  5. 10
    「救世主にはなり得ない」というシビアな見方…ピーク過ぎて速球150キロ超には歯が立たず

    「救世主にはなり得ない」というシビアな見方…ピーク過ぎて速球150キロ超には歯が立たず