「あとは野となれ大和撫子」宮内悠介著

公開日: 更新日:

 ソ連末期に建国された中央アジアの小国アラルスタン。農業支援で赴任していた両親と共にこの国で暮らしていた日本人少女ナツキは5歳のときに内戦に巻き込まれ、両親を失う。それから15年。孤児となったナツキは、第2代大統領アリーの肝いりで将来有望な少女たちを政治家や外交官として養成する教育機関となった後宮に引き取られ、間もなく卒業を控えていた。

 ところが、独立記念日に大統領が暗殺され、政府中枢の面々は皆逃げ出してしまう。残された後宮の少女たちは、リーダー格のアイシャを大統領代行に、ナツキが国防相、ナツキの親友ジャミラが文科相となって臨時政府を樹立。しかし、この政変に乗じて石油の利権を狙う周辺諸国、さらには反政府のイスラム原理主義勢力も不穏な動きを見せている。この危機にナツキたちは、祖国をなくしてならないと直接国民に呼びかけ、少しずつ支持を得ていくのだが、その行く手には……。

 荒唐無稽な設定ではあるが、権謀術数をもてあそぶ大人たちの政治手法に異を唱える彼女たちの真っすぐな声が胸に突き刺さる。(KADOKAWA 1600円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    高画質は必要ない? 民放各社が撤退検討と報じられた「BS4K」はなぜ失敗したのですか?

  2. 2

    大手家電量販店の創業家がトップに君臨する功罪…ビック、ノジマに続きヨドバシも下請法違反

  3. 3

    落合監督は投手起用に一切ノータッチ。全面的に任せられたオレはやりがいと緊張感があった

  4. 4

    自民党総裁選の“本命”小泉進次郎氏に「不出馬説」が流れた背景

  5. 5

    「二股不倫」永野芽郁の“第3の男”か? 坂口健太郎の業界評…さらに「別の男」が出てくる可能性は

  1. 6

    今思えばあの時から…落合博満さんが“秘密主義”になったワケ

  2. 7

    世界陸上「前髪あり」今田美桜にファンがうなる 「中森明菜の若かりし頃を彷彿」の相似性

  3. 8

    三谷幸喜がスポーツ強豪校だった世田谷学園を選んだワケ 4年前に理系コースを新設した進学校

  4. 9

    広陵暴力問題の闇…名門大学の推薦取り消し相次ぎ、中井監督の母校・大商大が「落ち穂拾い」

  5. 10

    佐々木朗希いったい何様? ロッテ球団スタッフ3人引き抜きメジャー帯同の波紋