著者のコラム一覧
白石あづさ

日本大学芸術学部卒。地域紙の記者を経て約3年間の世界放浪へと旅立つ。現在はフリーライターとして旅行雑誌などに執筆。著書に「世界のへんな肉」「世界のへんなおじさん」など。

「極楽往生、1名入りま~す」

公開日: 更新日:

「マンガで教養やさしい仏像」漫画/夏江まみ監修/吉田さらさ 朝日新聞出版 1200円+税

 以前、このコーナーで「大阪弁訳法華経」を紹介したとき、「仏様の種類ってスタバのメニューくらい複雑だなあ」と驚いたのだが、そのややこしい登場人仏(物)と役割を分かりやすく解説したのが本書である。

 主人公は少し暗いOLの知子。転職先の「仏カンパニー」に初出社すると同僚がみなまぶしい金ピカの仏様。エレベーターが開けば、社のスローガンである「救民!」のポスターが。戸惑いながらもジャッキー(邪鬼)先輩に導かれ、働くことになる。カンパニーの頂点に立つのは社長の仏陀、役員の如来に部長の菩薩、係長は明王。平社員はヒンズー教などから来た転職組で弁天様や四天王たちだ。

 出世組の如来には2つの大プロジェクトがある。チーム薬師如来の役割は、24時間体制で「国境のない医師団」ばりに、どこの人々でも病から救う「病気平癒」。一方、チーム阿弥陀如来は、死んだ人を迎えに行く「迎合」を行う。「〇〇さんが亡くなりましたあ!」「極楽往生、1名入りま~す」と元気のいい居酒屋のように皆、段取りよくテキパキ動く。

 3階の部長ルームでは、観音菩薩が十一面観音や千手観音などに七変化しながら「その男は無視! もっといい男を見つけなさいね」と、迷える人々の電話相談に乗っている。おお、観音オンラインがあったら私もいろいろ相談をするだろう。

 しかし、そんな優しい仏ばかりではない。怒りっぽい係長の不動明王の部屋はメラメラ燃えている。リストから救いようのない煩悩をピックアップし、せっせとブッタ切って火にくべるのだ。

 今まで仏様なんてだいたい一緒だと思い、薬師如来に「お金持ちになれますように」と祈っていたが、救護活動をしている仏様に訴えても部署違いで、願いを聞いてくれる菩薩に言うべきだった。しかし、私の他力本願な訴えなど、煩悩リストに入れられ係長の部屋であっという間に燃やされ続けていたに違いない。そんなミスマッチを避けるためにも、お参り前にぜひご一読を。

【連載】白石あづさのへんな世界

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    さすがチンピラ政党…維新「国保逃れ」脱法スキームが大炎上! 入手した“指南書”に書かれていること

  2. 2

    国民民主党の支持率ダダ下がりが止まらない…ついに野党第4党に転落、共産党にも抜かれそうな気配

  3. 3

    ドジャース「佐々木朗希放出」に現実味…2年連続サイ・ヤング賞左腕スクーバル獲得のトレード要員へ

  4. 4

    来秋ドラ1候補の高校BIG3は「全員直メジャー」の可能性…日本プロ野球経由は“遠回り”の認識広がる

  5. 5

    ギャラから解析する“TOKIOの絆” 国分太一コンプラ違反疑惑に松岡昌宏も城島茂も「共闘」

  1. 6

    国分太一問題で日テレの「城島&松岡に謝罪」に関係者が抱いた“違和感”

  2. 7

    小林薫&玉置浩二による唯一無二のハーモニー

  3. 8

    脆弱株価、利上げ報道で急落…これが高市経済無策への市場の反応だ

  4. 9

    「東京電力HD」はいまこそ仕掛けのタイミング 無配でも成長力が期待できる

  5. 10

    日本人選手で初めてサングラスとリストバンドを着用した、陰のファッションリーダー