「フォークロアの鍵」川瀬七緒著

公開日: 更新日:

 民俗学の口頭伝承を研究している大学院生の千夏は、文書に残っていない文化を探り出すために、認知症の人の記憶の中にある最後まで残った言葉を聞き出そうと思い立ち、グループホーム「風の里」を訪れた。職員に迷惑がられながらも、話し相手のボランティアのような立場を与えられた千夏が気になったのは、夕暮れ時になると決まってホームから脱走を図ろうとするルリ子という老女。

 ルリ子の口から発せられた「おろんくち」という言葉を手がかりに、彼女の中にある世界を探り始めたのだが……。

「よろずのことに気をつけよ」で第57回江戸川乱歩賞を受賞してデビューし、「法医昆虫学捜査官シリーズ」で大人気の作家による、深層心理の世界をテーマにしたミステリー。

 認知症の人の言葉を聞き出そうと真剣に彼らと向き合う主人公が、ホームの老人たちや調査の良き相棒となる悩みを抱えた高校生・大地を巻き込み、彼らに変化をもたらしていく様子が興味深い。(講談社 1500円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人がソフトB自由契約・有原航平に「3年20億円規模」の破格条件を準備 満を持しての交渉乗り出しへ

  2. 2

    【時の過ぎゆくままに】がレコ大歌唱賞に選ばれなかった沢田研二の心境

  3. 3

    NHK朝ドラ「ばけばけ」が途中から人気上昇のナゾ 暗く重く地味なストーリーなのに…

  4. 4

    国分太一との協議内容を“週刊誌にリーク”と言及…日本テレビ社長会見の波紋と、噴出した疑問の声

  5. 5

    衆院定数削減「1割」で自維合意のデタラメ…支持率“独り負け”で焦る維新は政局ごっこに躍起

  1. 6

    西武にとってエース今井達也の放出は「厄介払い」の側面も…損得勘定的にも今オフが“売り時”だった

  2. 7

    「おこめ券」でJAはボロ儲け? 国民から「いらない!」とブーイングでも鈴木農相が執着するワケ

  3. 8

    ドジャース首脳陣がシビアに評価する「大谷翔平の限界」…WBCから投打フル回転だと“ガス欠”確実

  4. 9

    立花孝志容疑者を追送検した兵庫県警の本気度 被害者ドンマッツ氏が振り返る「私人逮捕」の一部始終

  5. 10

    京浜急行電鉄×京成電鉄 空港と都心を結ぶ鉄道会社を比較